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第2218話

 あれ? この化け物って体液赤かったっけ?  地下研究所での最高傑作は、もっと違う色の体液だったような……? 「ガ、ぁア……!」  化け物が苦しそうに呻く。  ジークが攻撃を始めてしまった以上、アクセルも黙って見ているわけにはいかなくなった。  ――ああもう、こうなったらイチかバチか……!  小太刀を構え直し、化け物に向かって行く。 「タアアァァッ!」  いつものように小太刀を振り上げ、そして振り下ろした。  だが次の瞬間、信じられないことが起きた。 「待って、斬らないで!」 「えっ……!?」  化け物との間に割って入ってきたバルドルに気付いた時には、既に遅かった。  振り下ろした小太刀はすぐには止められず、バルドルの身体を正面から斬りつけてしまった。 「っ……!」 「バルドル様!?」  彼の身体から赤い血飛沫が上がる。  恩のある神様を斬ってしまったことに激しく動揺したし、何故バルドルがそんな行動をとったのかも理解不能だった。一体何のつもりなんだ。 「う……」  正面から斬りつけられたバルドルは、よろよろとその場に屈みこんだ。  左肩から右脇腹にかけてナナメに切り傷がついており、そこからダラダラ血が滲んでいる。 「バ、バルドル様、あの……」 「だ、大丈夫……下がってて……」  片手を上げてアクセルを制し、バルドルは後ろを振り返った。  彼の背後では、相変わらず化け物が蠢いている。  だが先程よりますます辛そうな声を出し、もぞもぞとバルドルに近づいていた。まるで擦り寄っているようにも見えた。 「あ、ギ……ウ……えェ」 「ねぇ……お前、ホズだよね……? ホズなんでしょう……?」 「えっ……!?」  本日一番の衝撃を受けた。  アクセルはぎょっと目を見開き、バルドルと化け物を交互に見た。  この肉の塊がホズって、どういうことなんだ? 何がどうしてこんなことになっているんだ? それじゃあ、さっき現れたボロボロのホズは一体……? 「あ、兄上、何言ってるんだ!? ホズは俺だよ! そいつはただの化け物だ」  そのホズが一歩前に出て抗議し始める。  だがバルドルは小さく首を振り、冷静に答えた。

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