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第2220話
ロキがそんな自虐を口にする。
とはいえ、その自虐にはロキの本音が混ざっているように思えた。
ロキは更に続けた。
「お前はいいよなぁ? 容姿にも才能にも恵まれて、生まれながらに地位も約束されててさ。こちとら化け物めいた連中も多い巨人族だぞ。フェンリルは狼だし、ヨルムンガンドは大蛇だし、ヘルなんか身体の半分が腐ってる。地位だってないに等しい。最初から皆に愛されて、『光の神』とかもてはやされてる誰かさんとは大違いだ。なあ、バルドル様よ?」
「…………」
「おまけにお前には、一途に慕ってくれる弟もいる。ミーミルの泉で視力失くしてまで力をつけようとしたり、お前を助けるためにオレに斬りかかってきたりさ。なんかそういうの、反吐が出るんだよな。こっちには誰にもいないってのに、いい気なもんだぜ」
一方的に恨み言を述べているロキ。
そんな嫉妬だけでここまでの事件を起こしたのかと思ったら、無性に腹が立ってきた。お前のせいで、一体どれだけの人が被害を被ったと思っているんだ。
ただ、側で聞いていて一部理解できるところもあった。
――要するに「お前ばかりずるい」ってことだよな……。
バルドルは最初から全てを持っていて、何もかも恵まれて不自由ない暮らしを送っている。
そんな彼と自分を比べて、あまりの差に惨めになるのだろう。
だから何とか神族になりたくて、オーディンと義兄弟の契りを交わしたり、トール(オーディンの息子の一人)と仲良くなったりしたのだ。
もっともそれも上手くいかなくて、結局惨めな自分を変えられなかった。
その鬱屈が全て恨みに変換され、オーディンを筆頭としたアース神族に再び復讐しようとしたのである。
その過程でまず血祭りにあげたのが、バルドルとホズだったのだろう。
「言いたいことはそれだけかい?」
バルドルが、淡々とロキに反論し始める。
「そりゃあね、確かに私は恵まれていると思うよ。最高神オーディンの息子で、容姿にも才能にも困ったことはない。可愛い弟もいるし、何なら一部の戦士 にも慕われている。実に幸せだなと思うよ」
「…………」
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