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第2221話

「ロキは私のこと『ずるい』と思っているんだよね? 私のようになりたかったんだよね?だったら、なってくれてもいいよ。容姿も名前も地位も、全部ロキにあげる。私はそんなものいらないし、ホズとどこかで静かに暮らしていければ、それで充分幸せさ」 「は……!? 自分の持っているものを全部捨てるっていうのか!?」 「うん、だって私にとってはたいしたものじゃないし。私の容姿や地位のせいでこんなトラブルが起きるなら、さっさと捨ててのんびり隠居生活した方がいいじゃない? 周りの人にも迷惑かけちゃうしさ」  そう言ったらロキは絶句していた。  ロキが執着しているものは全部、バルドルにとってはほぼ価値がない。簡単に手放せるくらい些細なものだったようだ。  こういう淡泊さも、ロキの嫉妬を煽る原因になっているような気がする。  ――でも、バルドル様の考えもわかるかな……。俺だって兄上さえいてくれれば、どこでどんな生活になろうが構わないし……。  立派な人になりたいとは思わないし、贅沢な暮らしをしたいとも思わない。  誰にも認められなくても、極貧の中でひもじくても、兄・フレインと一緒だったらそれでいいのだ。  この辺りの価値観は、ロキには一生理解できないだろう。彼には「この人さえいれば」という相手がいないから。 「ただね……どんなに私になろうとしても、やっぱりきみはきみのままだと思うよ」  と、バルドルが諭すように言う。 「きみは変身術が得意だから、外見はいくらでも寄せられるだろう。それで騙される人もいると思う。私のフリをし続ければ、ある程度の地位も手に入れられるかもしれない。でも、いくら変身したところで中身はきみのままなんだ。何も変わらない。きみ自身が変わらないことには、誰に変身しても意味がないんだよ」 「っ……お前に何がわかる! お前みたいに恵まれたヤツが、オレの気持ちなんてわかるはずがない! 知ったような口を利くな!」 「そうだね、わからない。だって私とロキは違う存在だもの。生まれも容姿も才能も立場も、何もかも違う。きみの気持ちなんて、全部わかるわけないよ」

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