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第2223話
「殺したいなら殺せばいいさ。そこの戦士どもをけしかけて、オレを串刺しにすりゃあいい。基本的にオレは、直接的な戦闘力はさほど高くないからな。戦士二人がかりなら、楽勝で仕留められるだろうよ」
「……!」
そう言われ、アクセルは困惑しながらバルドルを見た。
バルドルも、迷っているかのように視線を泳がせている。
これも罠ではないのか。そのまま襲い掛かったら、またロクなことにならない気がする。先程も勢いのまま斬りかかって、バルドルとホズに怪我を負わせてしまったし。
だからといって、このまま躊躇していても埒が明かない。話し合いは平行線のまま、時間だけが過ぎてしまう。
――バルドル様とホズ様だって、そろそろ怪我の手当てをしないとマズいし……。
平気そうに喋っているものの、バルドルの出血は止まっていない。ホズの足元にも赤い体液が溜まっている。これ以上時間をかけたら、出血多量で死んでしまう。
一体どうすればいいんだ……。
「っ……!」
だがその時、ロキの背後で見慣れた太刀が閃いた。
あっ、と思った時には既に仕事は完了しており、ロキは後ろからあっさりと首を刎ね飛ばされてしまった。
勢いよく胴体から離れた首は泉に向かってゴロゴロ転がり、そのままボチャン、と頭だけ沈んでいった。
沈む直前、ロキの頭と一瞬だけ目が合った。その顔は、世の中を恨みながらもどこかホッとしているような、複雑な表情をしていた。
「まったく、何を躊躇しているんだか。こんなの、スパッと斬っちゃうに限るでしょ」
「兄上……!?」
やはりロキの首を刎ねたのは、兄・フレインだった。
外で思いっきり戦ってきた後だからか、白ベースの衣装がかなり汚れてしまっている。血や泥もそうだが、片マントもだいぶ破れていた。
「よ、よかった……無事だったんだな。外での決着もついたわけか」
「ついたというか、戦っていたヴァルキリーたちが一斉に消えちゃってね」
「消えた……? 何それ、どういう意味だ?」
「こういう意味ですよ」
後ろからユーベルも現れて、残ったロキの胴体を指し示す。
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