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第2224話

 ロキの胴体はサラサラと砂のように崩れていき、最終的に跡形もなく風に飛ばされていった。 「砂……? え、これってどういう……? 巨人族って死ぬと砂になるんですか?」 「そうではなく、まがい物の身体だったということです」 「えっ……?」 「ロキの身体は死者の国(ヘル)での拷問で、とっくに限界を迎えていたのですよ。今あなた達と会話していたのは、彼が術で作り出した人形のようなものです。本体は既に死んでいたというですね」 「えっ!? な、何ですかそれ……? じゃあ偽物の身体を術か何かで作り出して、そこに自分の魂を入れたってことですか? そんなこと可能なんですか?」 「可能なんだろうねぇ。というか私たちだって、厳選された身体に魂入れられて生まれてるでしょ。やってることは似たようなものだよ」  と、兄が当たり前の口調でいう。 「ま、今まで使っていた本物の身体じゃないと、できることが限られるって制限はついてるみたいだけどね。とにかく、神々にとって『肉体の死』なんてたいした問題じゃないんだろう。魂さえあれば術で何とかなるんだから、当然っちゃ当然だよ」 「は、はあ……。それじゃ、表を警備していたヴァルキリーたちも……」 「ロキが作り出した人形が混ざってたよー。もちろん、全員じゃなかったけどねー。道理でご立派な装備の割りに動きが単調だと思ったー。斬られた仲間が人形だってわかった途端、生身のヴァルキリーは皆逃げていったよー」  ミューがペロペロキャンディー片手に、そんなことを言い出す。 「…………」  アクセルはロキが倒れた場所を無言で見つめた。  ――身体は死んでも、魂さえ生きていればどうにでもなるってことか……。  ここはアース神族の世界(アースガルズ)だ。そういう理がまかり通っているのは、何となく理解できる。  でもそれじゃ、ロキは完全に死んでないのではないだろうか。兄が首を斬っても、魂までは斬れていないのではないか。  もしそうだとしたら、また遠くない未来でロキが復活するような気がしてならない……。

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