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第2225話
「……!」
ロキがいなくなったのと同時に、周りの空間もぐにゃりと揺らめいた。
庭園のような景色は消え、大樹や泉も消失し、空間が元に戻っていく。
――ここは……。
アクセルたちがいたのは、屋敷の二階にある談話室だった。ここで生活していた時は、バルドルと話しながらよくお茶を飲んだことを思い出す。
「ホズ……!」
思い出に浸りかけていると、バルドルが両膝をついて床に転がっていた人物に縋りついた。
「ホズ……ホズ、大丈夫……!? しっかりして……!」
「…………」
「だ、だめだよ、お前だけ死者の国 に堕ちるのは……。それじゃ、何のためにここまで……」
「…………」
ホズの姿は、肉塊から元の姿に戻っている。だが全身はボロボロで血の海に沈んでおり、意識もなくなってしまっていた。
呼びかけていたバルドルもその場にうずくまり、力なく呟き始める。
「……ああ、私もダメだ……。力が入らなくなってきた……」
「バルドル様! ホズ様も……! 早く傷を治しましょう! ヴァルハラに行けば泉も棺もありますから!」
「泉は、ともかく……棺は、どうかな……。あれは、戦士用の蘇生道具だから……私たちが入っても、あまり意味が……ないかも……」
「何でもいいのでとにかく帰りましょう! 皆さんも手伝って!」
アクセルは大慌てでバルドルを担ぎ上げると、すぐさま屋敷を出てヴァルハラに直行した。ホズのことは兄が背負っていたが、まるで死んでいるみたいに動かなかった。
――ホズ様……こんなところで死んじゃダメですよ……!
やっとロキを追い出せたのだ。ようやく兄弟水入らずの生活に戻れるのだ。
それなのに片方だけ死んでしまったら、何のために屋敷に突入したのかわからなくなってしまう。一度死者の国 に堕ちたら、余程のことがない限り元の世界には帰れないのだ。永遠に離れ離れになるのと大差ない。
兄弟が離れ離れになる辛さは、自分が一番よく知ってるんだから……!
急いで泉に駆け込み、数名の戦士が利用しているのも気にせずど真ん中に飛び込む。
バルドルとホズの全身を泉に浸し、ひたすら回復するのを待った。
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