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第2228話
魔法の回復効果も合わせたら、ホズの顔色も少しずつ元に戻り始めた。
顔面蒼白で瀕死だった身体に血色が戻り、弱々しかった呼吸も徐々に正常になってくる。
――よ、よかった……何とかなりそう……。
この調子なら、あと数分で泉から出られるのではなかろうか。
ホッとしながら様子を見守っていたのだが、ホズの呼吸が完全回復したところでバルドルの身体が揺らめいた。
「バ、バルドル様、大丈夫ですか?」
ふらふらと泉に倒れ込みそうになるバルドルを、両腕で支えてやる。
「だ、大丈夫……だけど、なんかちょっと疲れちゃって……。もう動けそうにないや……。きみたちの家で、休ませてくれる……?」
「え、ええ、もちろんです。うちでゆっくり休んでください」
「ありがとう……。いろいろ甘えちゃってすまないね……」
泉から出る前に、念のためホズの傷の具合を確認してみる。
傷はほとんど塞がっており、細かな傷が少し残っている程度だった。外から見える出血はなく、内臓を損傷しているわけでもなさそうだ。
これならあとは、泉から出て安静にしていればいずれ目を覚ますはず。
アクセルはバルドルを背負い、自宅へ帰還した。
兄もホズを背負って帰り、それぞれベッドに寝かせて様子を見ることにした。
「これで、大きな仕事はひとつ片付いたかな」
リビングに戻り、兄がソファーで一息つく。
アクセルはキッチンでホットココアを淹れ、兄に持って行った。
「お疲れ様、兄上。正門での戦いで死ななくてよかったよ」
「ありがとう。お前も無事でよかったね。変な罠に引っ掛かったりしなかった?」
「あー……まあ、な。引っ掛かっても、他の人がカバーしてくれたから何とかなった」
屋敷内での出来事を、簡単に話して聞かせる。
兄は「ふんふん」と聞いていたが、途中、本の罠に引っ掛かって腹にナイフが刺さったことを話したら「またお前は油断して」と怒られた。
「まあでも、結果的に二人共無事だったから、私たちは上々かな。また元の生活に戻れそうで、本当によかった」
「ああ、そうだな……」
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