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第2229話
安心したら、急激な眠気が襲ってきた。気を張っていた糸が緩み、脱力して兄に凭れかかる。
「おや、眠くなっちゃった?」
「うん、ちょっと……。やっぱり俺も、気が抜けたのかな……」
「じゃあ、久しぶりに膝枕でもしてあげようか。お前、これ好きだったもんね」
「う……それは昔の話なんだが……」
とはいえ、今でも兄に添い寝されると安心しきって朝まで爆睡してしまう。それと似たようなものかもしれない。
「それじゃあこのままおやすみ、アクセル。何かあったら起こしてあげるね」
「ああ……ありがと……」
膝枕してくれた上、ご丁寧にタオルケットまでかけてくれる。
それで完全に気が抜けて、目を閉じた瞬間眠りに落ちてしまった。
***
「……ハッ!?」
次に目覚めた時には、外はすっかり暗くなっていた。
一瞬自分がどこにいるのか認識できなくて、起き上がった途端ソファーから転がり落ちてしまった。
――しまった……! ちょっとした仮眠のつもりだったのに……。
かなり長時間寝てしまっていたらしい。
バルドルやホズはどうなったのだろう。報告に行ったジークたちは帰って来たんだろうか。
「おやアクセル、やっと起きたのかい?」
キッチンで料理していた兄が、いつもの調子でこちらに話しかけてきた。大鍋でシチューを煮込んでおり、かなりの量がある。一体何人分あるのだろう。
「す、すまない……。なんか思いっきり寝入ってしまって」
「構わないよ、バルドル様とホズ様もまだ起きてないからね。ただ、オーディン様への報告は終わったって」
「ジーク様たち、帰ってきたのか? どうだったんだ?」
兄がおたまでシチューを掻き回しながら、教えてくれる。
結論からいうと、戦士 はほぼお咎めナシだったそうだ。
オーディンにとって一番問題だったのは自分の魔力が枯渇したことであり、ロキがヴァルキリーをそそのかしたことや、バルドルやホズが殺されかけたことは二の次だったみたいだ。
どちらかというと、魔力が枯渇した原因を作った――後先考えずに魔剣士をヴァルハラに招き、好き放題に暴れさせたヴァルキリーたちに失望していたらしい。
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