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第2230話

 その場には数名のヴァルキリーもいたみたいだが、オーディンの失望を感じると慌てて反論し始めたそうだ。 「お、お父様、それはあんまりでございます。戦士(エインヘリヤル)どもへの咎めがないのであれば、私たちも同様、お咎めはナシにすべきかと。私たちも、ロキにそそのかされた被害者なのですから」 「その結果、魔剣士をヴァルハラに入れて、戦士(エインヘリヤル)の半数近くを消失させたわけか。戦士(エインヘリヤル)は儂が集めた選りすぐりの猛者であり、戦力なのだ。儂の許可なしに勝手に人員を削るなど、あってはならぬ。貴様らは儂の魔力だけでなく、戦力にも打撃を与えたのだ」 「それは……。私たちはロキに騙されたのです。罰するべきはロキ一人。あの者のせいでバルドル様らも大変な被害を被ったのですから。原因は全てロキにあります。私たちは無罪でございます」 「そのロキに頼まれて、貴様らは屋敷を護衛していたと聞いているが? 誰がそのようなことをしていいと言った?」 「そ、それは……。ロキはあの時、バルドル様に変身しておりました。私たちはバルドル様だと思って屋敷を護衛していたのです。決してロキの味方をしていたとか、そういうことではございません」 「……ロキの変身も見抜けぬのか。ラグナロク後の貴様らは出来損ないばかりだと思っていたが、ここまで出来が悪いとはな……」  主君であるオーディンにハッキリ「出来損ない」と言われたヴァルキリーたちは、かなりショックを受けた様子で固まってしまった。  その後もあれやこれやと食い下がっていたそうだが、オーディンは質の低下したヴァルキリーたちを残しておく必要性を感じなかったらしく、今まで任せていた仕事を全部没収して全員透ノ国に閉じ込めてしまったとか。 「す、透ノ国に? それ大丈夫なのか? あそこには怪しい地下研究所がまだ残ってるんだぞ」 「まあそこはちょっと心配だけど、オーディン様の判断じゃ私たちにはどうにもできないよ。透ノ国にまとめて幽閉されるなら、こっちにとってはメリットの方が大きいじゃない?」

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