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第2231話

「それはそうかもしれないが……そもそも透ノ国は、俺たちが管理するって話になってなかったっけ? いろんなゴタゴタがあって全然整備できてなかったけど」 「うーん……でもその話も、ヴァルキリーたちが一方的に押し付けてきただけだしねぇ。彼女たちが透ノ国に閉じ込められちゃったなら、その話もなかったことになるんじゃないの?」 「それはそうかもしれないが……」 「何なら、ヴァルキリーたちがこのまま透ノ国を管理してくれるかもよ? あんなところにいてもやることないし、整備するくらいしか時間潰せないもん」 「……そういうものなのか? 本当にいいのか、それで……」  いまいち納得できないが、オーディンが決めてしまった以上、こちらがあれこれ口を出すことはできない。  ――まあ、話が通じないヴァルキリーたちに関わらなくてもよくなったのは、純粋なメリットかもな。  ヴァルハラの管理者もクビになったみたいだし、今後はクレームの度にいちいち腹を立てることもなくなるわけだ。それはそれで、ありがたいかもしれない。 「じゃあ、これからヴァルハラはどうなるんだ? 一体誰が管理するんだ?」 「さあ……そこまでは聞いてないな。私たちに自治権を譲ったところで、複雑な権力争いが始まりそうだしね。話の通じる柔軟な神様が管理してくれるのが、一番かもしれないよ」 「そうか……」  ふとバルドルの顔が思い浮かぶ。  バルドルなら自分たちとも縁が深いし、新たな管理者になってくれればいろいろ便宜を図ってくれそうだ。アクセルからすればこれほど都合のいい人選はない。  彼が目覚めたら少し話を振ってみようか。 「ところでお前、お腹空いてるだろう? そろそろご飯にしよう。今日はイノシシ肉たっぷりのシチューにしたんだ」 「そうか。兄上のシチューは久しぶりだな」  アクセルは早速深めの皿にシチューを盛り、バゲットを食べやすい大きさに切って一緒に添えた。  ピピとカメが「メシをくれ」とベランダから催促してきたので、彼らにもシチューとバゲットを分けてやった。

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