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第2251話
それから二ヶ月ほどが経過した。
ヴァルハラの生活は、おおよそ元の状態に戻っていた。
市場は全ての店が再開しているし、中堅ランカーの住宅街の復興も進み、泉や棺もいつも通り使える。
戦士 の数は少し減ってしまったが、総合的に見れば私生活に支障はない。
ヴァルハラの新たな管理責任者として、バルドルが就任したことも大きかった。
「バルドル様、これ今週の報告書です」
アクセルは、一週間分の分厚いレポートをごっそりバルドルに提出しに行った。
レポートの中には、全戦士を対象にした簡単なアンケート用紙も含まれている。名前とランクを記入してもらって、戦士名簿を作り直すのだそうだ。
一ヶ月経ってもまだ回答してくれない戦士もいるので、来週になったら直接自宅に乗り込んでアンケートを回収してこようと思っている。
「ありがとう。助かるよ」
と、バルドルがにこやかに礼を言ってくれる。
新たな管理者になったせいか、ここしばらくバルドルは忙しそうだった。
何せヴァルキリーが何の引き継ぎもせずに「透ノ国」送りになってしまった上、ヴァルハラに関する資料もロクに残っていなかったのである。
戦士名簿すらなかったから死合いの対戦表を作ることもできなくて、バルドルも頭を抱えたそうだ。
「まったく……ヴァルキリーどもめ、透ノ国送りになっても迷惑千万だな。必要なものは残さず、いらないものばかり残していく。こんな状況で、よく今まで見逃されていたものだ」
ホズは、当然のようにバルドルの補佐をしている。が、その彼も訪ねる度に愚痴をこぼしていた。
ここでいう「必要なもの」とはヴァルハラの管理に使う名簿等だが、「いらないもの」というのは魔剣士たちのことである。
あれは魔法具を渡されただけの「一般人」なので、戦士 の基準を満たしていない。
そのままヴァルハラに置いておくわけにもいかず、かといってアース神族の世界 に連れて行っても使えないので、バルドルは彼らも全員「透ノ国」に送ることに決めたそうだ。
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