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第2254話

「さ、私たちも帰ろうか。やるべきことはいっぱいあるからね」  兄に促され、アクセルは爪痕から視線を外した。  そしてバルドルに「魔剣士」たちの処理を報告し、ヴァルハラに戻った。 ***  数日後、世界樹(ユグドラシル)前の掲示板に新たなランキング表が貼り出された。  戦士全員にとったアンケートを元に集計した結果をまとめただけの表だったが、ランキング表自体見るのが久しぶりだ。  自分の順位はわかりきっていたのに、何故かわくわくする。 「あれ。お前、まだ一〇〇位台だったっけ? もっと上かと思ってたよ」  一緒に順位を確認していた兄が、掲示板を見上げて腰に手を当てる。 「感覚的には、とっくに一〇位以内に入ってそうなんだけどな」 「そうでもないぞ。よくよく考えたら俺、魔剣士がヴァルハラをめちゃくちゃにした辺りからまともな死合いをしてないし。その分、ポイントを稼ぐ手段もなくて一〇〇位台のまま動いていなかったんだ」 「そうだっけ? それも何だかもったいないね。早く私の近くまで上がってきなさいよ」 「死合いが再開したらな。ランキング表が完成したなら、死合いの組み合わせもそろそろ発表されるだろう」  アクセルは改めてトップランカーのところに目をやった。  兄・フレインは相変わらず三位のままで、その上にミューとランゴバルトが居座っている。  その下もユーベル、ジーク、ケイジ……といったいつものメンバーで、この六人は不動のまま変わっていなかった。  ――いつか俺も、この人たちのすぐ近くに……。  そこまで考え、アクセルはその場で軽く屈伸運動をした。  そして足首も回すと、兄に向かって言った。 「兄上、家まで競争しよう」 「おや、挑戦状かい? 私にスタミナで勝てると思ってるのかな?」 「勝てるさ。俺だって、いつまでもあなたの後ろを追いかけているわけじゃないんだ」  そういうやいなや、アクセルは世界樹(ユグドラシル)に背を向けて走り出した。

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