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第2256話
「あーもう! こんな時にどこ行ったんだよ……」
このまま待ってようかとも思ったが、兄は一度出掛けてしまうとしばらく帰ってこないことも多い。
仕方がないのでアクセルは、再び戸締りをしてバルドルの屋敷に向かった。まずは対戦表についての礼をしなければと思ったのだ。
「バルドル様、死合いの対戦表見ました。あれ、わざと兄と組み合わせてくれたんですよね? ありがとうございます」
「ああ、あれね。ふふ、喜んでくれたかな?」
「ええ、とても。本当に嬉しかったです。兄と死合うことは長年の夢だったので」
「それならよかった。開幕一戦目は私も観戦したいからね、盛り上がる死合いを期待しているよ」
「しかし、今回の組み合わせは死合い再開のサービスみたいなものだ。今後は思った相手とマッチングできるとは限らんぞ」
と、ホズが口を挟んでくる。
「基本的に死合いは、同ランク帯の戦士と当たるように組み合わせている。これからもフレインと死合いたいと思うなら、もう少しランクを上げることだ」
「は、はい……」
「それと、死合いまでにコンディションを整えておくのも忘れるな。今までトラブル続きで、まともな鍛錬は数えるほどしかできていないようだからな。兄上が観戦なさる死合いなんだから、無様な内容にはしてくれるなよ」
「わ、わかっています」
「まあまあ。アクセルは真面目な頑張り屋さんだから、そういう心配は無用さ。そういうホズだって、二人の死合いを楽しみにしているじゃない?」
バルドルが軽く嗜めたら、ホズはふいと視線を逸らしてしまった。楽しみにしているのは本当だったらしい。
「というわけで、当日は頑張ってね。私はホズと、特等席で観戦しているよ」
「はい、頑張ります。ありがとうございました」
かなり遠回りをしたが、やっと兄と死合うことができる。
ヴァルハラに来たばかりの頃は手も足も出なかったけど、今度はそうはいかない。
神をも魅了する最高の死合いを、兄と二人で見せてやろう。
再度礼を言って、アクセルは早足でヴァルハラに帰った。
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