2256 / 2296

第2256話

「あーもう! こんな時にどこ行ったんだよ……」  このまま待ってようかとも思ったが、兄は一度出掛けてしまうとしばらく帰ってこないことも多い。  仕方がないのでアクセルは、再び戸締りをしてバルドルの屋敷に向かった。まずは対戦表についての礼をしなければと思ったのだ。 「バルドル様、死合いの対戦表見ました。あれ、わざと兄と組み合わせてくれたんですよね? ありがとうございます」 「ああ、あれね。ふふ、喜んでくれたかな?」 「ええ、とても。本当に嬉しかったです。兄と死合うことは長年の夢だったので」 「それならよかった。開幕一戦目は私も観戦したいからね、盛り上がる死合いを期待しているよ」 「しかし、今回の組み合わせは死合い再開のサービスみたいなものだ。今後は思った相手とマッチングできるとは限らんぞ」  と、ホズが口を挟んでくる。 「基本的に死合いは、同ランク帯の戦士と当たるように組み合わせている。これからもフレインと死合いたいと思うなら、もう少しランクを上げることだ」 「は、はい……」 「それと、死合いまでにコンディションを整えておくのも忘れるな。今までトラブル続きで、まともな鍛錬は数えるほどしかできていないようだからな。兄上が観戦なさる死合いなんだから、無様な内容にはしてくれるなよ」 「わ、わかっています」 「まあまあ。アクセルは真面目な頑張り屋さんだから、そういう心配は無用さ。そういうホズだって、二人の死合いを楽しみにしているじゃない?」  バルドルが軽く嗜めたら、ホズはふいと視線を逸らしてしまった。楽しみにしているのは本当だったらしい。 「というわけで、当日は頑張ってね。私はホズと、特等席で観戦しているよ」 「はい、頑張ります。ありがとうございました」  かなり遠回りをしたが、やっと兄と死合うことができる。  ヴァルハラに来たばかりの頃は手も足も出なかったけど、今度はそうはいかない。  神をも魅了する最高の死合いを、兄と二人で見せてやろう。  再度礼を言って、アクセルは早足でヴァルハラに帰った。
5
いいね
4
萌えた
2
切ない
0
エロい
5
尊い
リアクションとは?
コメント

ともだちにシェアしよう!