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第2261話
周囲の気配がだんだんと掻き消されて行く。兄のことしか目に入らなくなる。
大歓声ですら聞こえなくなり、代わりに兄の心の声が直接鼓膜を震わせてきた。
――うん、私も楽しみにしていた。どこからでもかかっておいで。
兄がすっ……と愛刀に手をかけた。アクセルも二振りの小太刀を掴んだ。
「三……二……一……、ファイト!」
合図と共に、アクセルは飛び出した。
愛用の小太刀を抜きながら突進し、兄に向かって斬りかかる。
「たあああぁっ!」
微笑みながら、兄も抜刀してきた。
当たり前のように太刀を振り抜き、二振りの小太刀を受け止めてくる。
ガキン、と金属同士がぶつかり合う音がして、一瞬明るい火花が散った。
続けざま更に間合いに踏み込み、追撃の十字切りを繰り出す。
真上と横から同時に薙ぎ払う斬撃も、兄の長い太刀に器用に受けられ、そのままぐぐっ……と押し切られそうになった。
両手で必死につばぜり合いしつつ、至近距離で兄に言う。
「……さすが兄上。この程度じゃ傷ひとつつけられないか」
「ふふ、先に一撃もらうわけにはいかないからね」
兄が太刀をスライドさせ、ガチン、とこちらの小太刀を跳ね上げてくる。
そして真正面から勢いよく太刀を振り下ろしてきた。
「くっ……!」
防御は間に合わないと直感で判断し、サッと身を引いてその場から後退する。
自分の目と鼻の先を太刀の切っ先が通過していき、振り下ろした風圧で前髪が少し千切れた。
間髪入れず横から太刀を薙ぎ払われ、小太刀二振りで防ごうと試みる。
小気味のいい金属音がして、受け止めた衝撃がビリビリと掌に伝わってきた。
「重い……!」
「そりゃそうさ。お兄ちゃんの斬撃を舐めちゃいけないよ」
雄々しく口角を上げ、チラリと犬歯を覗かせてくる。
言うやいなや、力ずくで小太刀を弾き上げられ、胴体ごとスパッと切られそうになった。
アクセルはパッと空中に跳んで避け、兄の背後に回った。
――腕力じゃ、あなたに敵わないのはわかってるんだ……。
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