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第2262話
これに関しては、生前から歯が立たないと承知している。
兄の腕力を真似できなかったから、アクセルは太刀を使うのを諦めて二振りの小太刀に変更したのだ。元より打ち込みの威力で競おうだなんて思っていない。
――でも、速さなら……!
純粋な力では敵わなくても、手数の速さならきっと負けない。
防ぐ暇もないくらいの連撃を繰り出せば、兄もいずれ……。
「はあっ!」
アクセルは、兄の背後から右の小太刀を振り抜いた。
兄はそれを太刀ではなく、左の腰に差していた太刀の鞘で受け止めた。
頑丈な鞘は小太刀の斬撃を受けても切れることはなく、ガキンと音を立てて刀身を弾き返した。
「甘いね」
振り向きざま、兄は鞘を太刀同様に振るってきた。
まるで二振り目の太刀のように、片手で軽々横に薙ぎ払ってくる。この腕力はさすがと言うしかない。
だが……。
「たああぁっ!」
身体を捻りつつ、アクセルは左の小太刀も横に振り抜いた。
兄は鞘でもう一度小太刀を受け止めたが、同じ場所に二度攻撃を受けたせいで、鞘にメキッと割れ目ができていた。
――ここだ……!
追い打ちのように、弾かれた右の小太刀を鞘に叩きつける。
傷ついていた鞘は三度の攻撃に耐え切れず、バキッと音を立てて真っ二つに折れた。
「……!」
折れた鞘に構わず、すぐさま十字の斬撃を繰り出す。
ここで攻撃の手を緩めてはならない。兄が体勢を崩しかけた今がチャンスだ。
「……ちっ」
兄は回避が間に合わないと見るや、折れた鞘を素早く投げ捨て太刀を横に構えてきた。
そして小太刀を受け止めつつ、フリーになった拳を正面に突き出そうとした。
「タアアァァッ!」
アクセルは戦士の雄叫びを上げた。
昂った気持ちを全て戦闘力に変換するべく、殺気と闘志を一気に爆発させる。
アクセルが放った十字の斬撃は、そのまま風の刃となって兄の太刀をすり抜け、兄の頬を掠めて金髪を一房刈り取った。
「ありゃ」
不意打ちのような覚醒に、兄が少し目を丸くする。
先に一撃入れられるとは思っていなかったらしく、頬から滴る血を自分の手で拭っていた。
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