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第2263話※
「……どうだ、兄上? 俺だって兄上に負けない部分はあるんだぞ」
正面に兄を見据えつつ、やや誇らしげに語りかける。
自分が蓄えてきた力を、兄にぶつけられるのが嬉しかった。
それで兄がどんな反応をしてくれるのか、どんな風に応えてくれるのか、楽しみで仕方がなかった。
「……うん、確かにそうだ。お前の方が秀でているところはたくさんある。でも……」
血のついた指先をぺろりと舐め、兄が言う。
「この私から一本取るのは、そんな簡単なことじゃないからね……!」
兄の目がカッと見開かれた。途端、殺気と闘志が膨れ上がった。
周囲の空気が一変し、ぶわっと髪が逆立って凄まじい覇気が全身から迸る。
「ギェアアアアアッ!」
「兄上……!」
狂戦士に覚醒した。こちらの雄叫びに応えてくれた。
それでますます興奮し、ぞくぞくと血が騒ぎ出す。
ああ……この高揚感、たまらない……!
「いいとも。ここから先は、手加減なしだ。互いの四肢が吹き飛ぶまで……命尽きるまで斬り合おうじゃないか!」
「望むところだ! こちらも全力でいかせてもらう!」
吠えながら、アクセルは真っ直ぐ突進していった。
狂戦士モードになったことで運動能力が飛躍的に向上し、痛覚以外の感覚が研ぎ澄まされる。相手の動きはもちろん、音や匂い、気配に至るまでハッキリ感じ取ることができる。
兄の息遣い、血の匂い、滴る汗、肉の感触……その全てがアクセルを興奮させる。
もうあなたしか見えない。あなたの全てを、この身に感じたい……。
「タアアァァッ!」
両手の小太刀を振り上げ、正面から斬りかかった。
兄は斜め下に太刀を構え、振り下ろされた小太刀を蹴散らすように斬り上げてきた。
「っ……!」
斬り上げの太刀は受け止めたものの、風の刃までは止められず衣装の袖やボタンが吹っ飛ばされていく。
体勢を立て直そうと左脚を一歩後ろに出した途端、兄が太刀を横一文字に薙ぎ払った。
痛みは感じなかったが胸部を浅く斬られた感覚があり、服が裂けて鮮やかな血液が舞い散った。一歩後退していなかったら、胴体をザックリ斬られていたと思われる。
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