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第2264話※
「ああ……」
ズザザ……と、後退して兄と距離を取る。そして恍惚とした目で兄を見た。
兄に斬られる感覚……これもまた、たまらない。こんなことができるのはヴァルハラだけだ。死んでも復活できる環境だからこそ、全力を出して本気で斬り合えるのだ。
心から愛している相手に自分の全てをぶつけられる……こんな幸せ、滅多に味わえるものではない。もっとこの幸福を味わいたい。もっと、もっと。
アクセルがごくりと喉を鳴らしていると、兄は微笑みながらこちらを見据えてきた。
「お前、随分はしたない顔をしているね。私に斬られるのがそんなに気持ちいいのかい?」
「……そうだな。あなたの本気を受け止められる……あなたの全てを刻んでもらえる……。そう思うだけで、興奮が止まらなくなるよ」
「そうか」
兄が血の滴る太刀の刀身に軽く唇を当てた。兄の唇が、血で艶やかに赤くなった。
「私も、お前の血と肉を味わうのは楽しくてたまらないよ。お前と一緒にすることなら、死合いも閨事もさほど変わらないからね」
太刀を地面に振り、血をピッと払い落とす兄。茶色の土に赤い血が飛び、地面を黒く染めた。
そんな兄の唇には、紅のようにアクセルの血がついている。あの状態で口付けられたら、血のキスマークがつくことだろう。それもまた一興だ。
ぞくぞくしていたら、兄はちろりと舌先を出して己の唇を舐めた。
それでまた身体の芯が疼き、アクセルは高揚しながら聞いた。
「兄上、俺の血は美味いか?」
「そうだね。とても美味だ」
「それならよかった」
全身の血が沸騰し、身体が燃えるように熱くなってきた。
更なる闘志が湧き、両手の小太刀を構え直す。
「ならば俺も、あなたの味をこの舌に……!」
「やってみればいいさ。できるものなら、ね」
その答えを聞くやいなや、アクセルは再び兄に突進していた。
溢れ出る闘志の赴くまま、正面から斬り付け、横から薙ぎ払い、下から斬り上げ、連続で小太刀を振るいまくる。
「タアアァァッ!」
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