2266 / 2296
第2266話※
「ハアアッ!」
両腕を振りかぶり、二振りまとめて小太刀を振り下ろした。
兄は難なくそれを防ぐと、こちらの胴体を蹴り飛ばして強引に距離を取ってきた。
何だよ、もっと斬り合いたいのに。距離を取ったらあなたを斬れないじゃないか。
兄上だって、俺との死合いを楽しみにしていたんだろう? だったらもっと激しく斬り合わなくては。せっかくの死合いが台無しだ。
「兄上えぇぇ!」
叫びながら、アクセルは再び兄に向かって行った。
間合いに踏み込んだ途端、兄が太刀を振るって来たので、何とかかいくぐりながら接近しようと試みる。
その間にも腕や脚、頬など身体の至るところが切れ、細かく血が飛んで行った。目の前の血の粒ひとつひとつが、全て鮮明に見えた。
「っ、うわっ!」
小太刀を振るおうとしたら今度は顔を殴られ、近くの地面に叩きつけられる。
追撃の太刀を躱すべく、素早く転がって起き上がり、もう一度兄に近づこうとした。
だが、それも兄に太刀で防がれてしまう。
「だから、もう少し落ち着きなさいってば。それじゃ最期まで保たないよ」
兄が小太刀を弾き上げ、横からヒュッと太刀を薙ぎ払ってくる。
右から刀身が迫ってくるのが見えたが、同時に胴体がガラ空きになっていた。
――こうなったら、イチかバチか……!
アクセルは防御も回避もやめて、太刀の斬撃を右の肩で受けた。
ゴリッと骨まで斬られた音がして、右手の力が一気に抜けた。
だが、ここまで来たら止まるわけにはいかない。
「もらった!」
自由な左手で小太刀をしっかり握り、兄の腹部にぐさりと突き刺した。
確実な手応えが嬉しくなり、兄に抱きつくように奥深くまで刺し込んだ。
「かはっ……!」
当然のことながら、兄が呻いて仰け反る。
痛みは感じていなくても身体のダメージはそのままなので、内臓損傷による血が口から溢れていた。
やった、やった! 兄上に確実な一撃を入れられた!
兄の肉を刺す感覚、血の匂い、戦いの汗……全てが愛おしい。たまらない。
「ああ、兄上……」
小太刀を握ったまま、アクセルは兄の首元に顔を寄せた。
ともだちにシェアしよう!

