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第2266話※

「ハアアッ!」  両腕を振りかぶり、二振りまとめて小太刀を振り下ろした。  兄は難なくそれを防ぐと、こちらの胴体を蹴り飛ばして強引に距離を取ってきた。  何だよ、もっと斬り合いたいのに。距離を取ったらあなたを斬れないじゃないか。  兄上だって、俺との死合いを楽しみにしていたんだろう? だったらもっと激しく斬り合わなくては。せっかくの死合いが台無しだ。 「兄上えぇぇ!」  叫びながら、アクセルは再び兄に向かって行った。  間合いに踏み込んだ途端、兄が太刀を振るって来たので、何とかかいくぐりながら接近しようと試みる。  その間にも腕や脚、頬など身体の至るところが切れ、細かく血が飛んで行った。目の前の血の粒ひとつひとつが、全て鮮明に見えた。 「っ、うわっ!」  小太刀を振るおうとしたら今度は顔を殴られ、近くの地面に叩きつけられる。  追撃の太刀を躱すべく、素早く転がって起き上がり、もう一度兄に近づこうとした。  だが、それも兄に太刀で防がれてしまう。 「だから、もう少し落ち着きなさいってば。それじゃ最期まで保たないよ」  兄が小太刀を弾き上げ、横からヒュッと太刀を薙ぎ払ってくる。  右から刀身が迫ってくるのが見えたが、同時に胴体がガラ空きになっていた。  ――こうなったら、イチかバチか……!  アクセルは防御も回避もやめて、太刀の斬撃を右の肩で受けた。  ゴリッと骨まで斬られた音がして、右手の力が一気に抜けた。  だが、ここまで来たら止まるわけにはいかない。 「もらった!」  自由な左手で小太刀をしっかり握り、兄の腹部にぐさりと突き刺した。  確実な手応えが嬉しくなり、兄に抱きつくように奥深くまで刺し込んだ。 「かはっ……!」  当然のことながら、兄が呻いて仰け反る。  痛みは感じていなくても身体のダメージはそのままなので、内臓損傷による血が口から溢れていた。  やった、やった! 兄上に確実な一撃を入れられた!  兄の肉を刺す感覚、血の匂い、戦いの汗……全てが愛おしい。たまらない。 「ああ、兄上……」  小太刀を握ったまま、アクセルは兄の首元に顔を寄せた。

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