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第2268話※
「本当に、ヴァルハラは最高だね。こんなにボロボロになっても、まだ立っていられる。死ぬのを恐れず、最期まで全力で戦える。これだから戦士 はやめられないんだ」
抜いた小太刀をこちらに差し出してくる兄。
兄の返り血が顔に降りかかってきて、興奮と同時に相手への心配も芽生えてきた。
アクセルは深呼吸をして立ち上がり、小太刀の柄を掴んだ。
「ありがとう、兄上……。でもその身体では……」
「大丈夫、この程度では倒れないよ。胸を一突きされた程度で負けてちゃ、トップランカーの名折れだもの」
「……!」
「さあ、お前も正気に戻ったことだし、改めて死合おうか。私もまだまだ斬り足りないからね。こんなところで終わるのはもったいないよ」
「あ……」
片マントでこちらの顔を拭き、にこりと微笑んでくる兄。
そんな兄を見たら、どうしようもなく胸が高鳴ってしまった。
感情が昂って熱い涙が溢れ出し、血に濡れた頬を洗い流していく。
「ど、どうしよう……俺……もう、兄上のことが好きで好きでしょうがない……。今が幸せすぎて、また自分を抑えられなくなりそう……」
「ふふ、安心して。もしお前が暴走したら、また私が止めてあげる。だからお前は、存分に力を発揮するといい。全力でかかってきなさい」
「兄上……」
ぐすん、と鼻をすすり上げる。
そう言ってくれるのは嬉しい。兄がいてくれれば、アクセルは何の不安もなく純粋に死合いを楽しめる。例え暴走しても、兄ならこちらが獣化する前に絶対止めてくれるだろう。
――でも……この怪我では、兄上も長くは……。
元気に振る舞っているが、兄の顔色はいつもより青白い。
これだけ出血していれば血が足りなくなるのは当然だし、ダメージだってかなりのものだろう。自分でやっておいてなんだが、痛々しくてたまらない。
獣化を止めるための負傷だから、これはノーカンにしてくれないだろうか。この状態で兄に勝ったとしても、素直に喜べないのだが……。
「えー……突然ですが、ここでバルドル様より『タイム』が入りました」
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