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第2269話

 唐突にチェイニーのアナウンスが入り、アクセルはハッと息を呑んだ。  兄も「おや」と天を見上げ、何事かと訝しむ。  専用席に座っていたバルドルが立ち上がり、両手を広げて微笑んできた。 「実にいいものを見せてもらったよ。きみたちは本当に熱い戦いをするね。せっかくだから、ここから仕切り直しといこうか」  次の瞬間、アクセルと兄の周囲を暖かい光が包み込んだ。  足元から頭まで纏わりつくように、ふわっとした優しさに全身が満たされていく。温かい泉に入った時みたいな、不思議な感覚だ。 「ん……?」  何の気なしに右腕を動かしたら、何の違和感もなく動くようになっていた。  先程兄の太刀を受け止めて骨ごと斬られたはずなのに、力も入るし武器も握れる。  驚いて兄を見たら、兄も同じように回復していた。胸部の刺し傷はすっかり消え去り、顔色も元に戻って、健康な兄の顔になっている。 「おお、これはすごい……。さすがはバルドル様」  自分の全身を見下ろし、兄が感心したように言った。  バルドルの慈愛の光は、傷ついたアクセルたちを元の状態まで回復してくれたみたいだ。  そんなバルドルは、いとも楽しそうにこう宣言してくる。 「さあ、もっと素晴らしい死合いを見せておくれ」  神から直接鼓舞を受け、アクセルの興奮も再び高まってきた。  兄・フレインも同じように高まったのか、改めて太刀を握り直して言う。 「バルドル様直々のリクエストだ、無下にするわけにはいかないね」 「ああ、そうだな。第二ラウンドといこうか、兄上」  途端、ぶわあっと殺気と闘志が膨れ上がった。  会場全体を揺るがすほどのエネルギーが迸り、空気が重く痺れてくる。 「タアアァァッ!」 「ギェアアアアアッ!」  お互いに咆哮を上げながら抜刀し、打ち合った。  アクセルが振り下ろした小太刀を兄が太刀で受け止め、お返しとばかりにもう片方の拳を振るってくる。 「くっ……!」  頭を下げてそれを避け、背を低くしてサッと足払いをした。  兄はひょいとジャンプして蹴りを躱すと、空中から太刀の三段突きを繰り出してきた。

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