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第2270話※
ごろりと地面を転がって避けたが、突きの一撃が左腕を掠める。
痛みは感じないものの早速目の前で自分の血が噴き出し、アクセルは軽く顔をしかめた。
――斬られたか……。
先程より攻撃が激しい。
今はまだこれくらいで済んでいるが、この調子ではいつ腕や脚を斬り落とされてもおかしくないだろう。
アクセルは素早く立ち上がって再び兄の間合いに入り込み、両手の小太刀を斜めに振り下ろした。
間髪入れず、振り下ろした小太刀を再び振り上げ、横一文字に薙ぎ払う。
元々アクセルは手数勝負だ。兄の攻撃を上回るくらいの速さで攻めないと、勝ち筋はない。
先程の一戦目で、太刀の鞘は破壊してある。兄が攻撃を防げる手段は太刀そのものしかない。何度も攻撃を加えていけば必ず勝機は出てくるはずだ。
「タアアアァッ!」
少し距離を取りつつ、今度は間合いの外からぶんぶんと小太刀を振り回す。
威嚇がてら風の刃を飛ばしたつもりだったが、そんなことでは兄は止まらなかった。
華麗な身のこなしでひらりとそれを躱しつつ、こちらの懐に飛び込んでくる。
「ギェアアアァッ!」
兄が太刀を横に薙ぎ払ってきた。
鋭い斬撃がこちらに迫ってきた。
どうする? 回避か? 防御か? それとも逃げるか?
――どれも違う……っ!
「タアアアァッ!」
兄に応えるように、アクセルも小太刀を振り抜いた。
瞬間、お互いの刃がお互いの身体を切り裂いた。
アクセルの右脚が太ももから千切れ、兄の右腕も二の腕から吹っ飛んだ。
「……ちっ!」
斬られた瞬間、兄に蹴飛ばされて強引に間合いを取らされる。
これ幸いとアクセルは小太刀の鞘を引き抜き、素早く右脚に添えて杖替わりにした。
兄も飛んで行った右腕から太刀を回収し、左手に持ち替えた。
「ああ……楽しいなぁ。やっぱりお前と斬り合うのは、最高に気持ちがいいよ」
そう微笑みながらも、兄の雰囲気は変わっていなかった。
殺気と闘志を剥き出しにし、漲る力を隠そうともせず、目つきは鋭いままこちらを見据えている。
片腕になってもその迫力は一切衰えず、むしろ先程よりもパワーが増しているようにも見えた。
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