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第2273話※(アクセル~フレイン視点)
自分は兄ほどには強くないから、死合い中に「こだわり」を見せられるほど余裕はないから、泥臭くても何でも使えるものは使わなくてはならない。
それがアクセルなりの意地だ。
「っ……」
胴体が三分の一ほど切れ、激しく吐血する兄。
だが、そこまでだった。
胴体を切断するはずだった小太刀は、力が足りずに途中で止まってしまった。
その間に兄が頸動脈をザクッと切り裂いてきて、とうとう小太刀を握る手がずるりとすべり落ちる。
――く、そ……。
最期の最期で力が足りなかった。兄の胴体を断ち切れなかった。
もう少しだったのに、悔しい。かなり頑張ったつもりだったが、あなたにはまだ届かないのか。
「惜しかった、ね……」
兄の囁きが聞こえた。
視界はほとんど利かなくなり、意識もだんだん遠のいていく。自分の命が燃え尽きようとしているのがわかる。
――兄上……。
明滅する意識の中、アクセルは何とか唇を動かした。
声は出なかったが、唇の形だけで何とか兄に言葉を伝えようとする。
兄もそれを察して、至近距離まで顔を近づけてきた。
「つぎ……こそ、は……あなた……を……」
仕方がない、今日のところはあなたの勝ちだ。最期まで力を出し切れなかった、俺の負けだ。
でも、今度死合う時は負けない。
もっともっと鍛錬を積んで、絶対あなたに勝ってみせる。
だからそれまで、待っててくれよな、兄上……。
微笑みかけたつもりだったが、それが兄に伝わったかはわからない。
とうとう意識がなくなり、アクセルは静かな闇に沈んでいった。
***
「アクセル、戦闘不能! 勝者、フレイン!」
そのアナウンスが耳に届いた頃には、目の前の弟は事切れていた。
フレインは半開きになっている弟の目と唇を閉じてやり、ぐったりと脱力した。
――かなりの辛勝、だった……な……。
腹に刺さっている小太刀を投げやりに引き抜く。
喉元から更なる血がせり上がってきたけれど、どこが痛いのかもわからなくなりつつあった。頭がくらくらして意識もぼやけ、身体もいつもより重く感じる。
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