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第2274話(フレイン視点)

 本当にギリギリの死合いだった。  弟の攻撃が速くなっているのはもちろん、どんなに攻撃しても死ぬ直前まで狂戦士モードを切らさなかった。  そこまで気力を保てるのもたいしたものだし、仮にもランキング三位のトップランカーをここまで手こずらせるのは相当な猛者(もさ)である。  いつも自分の後ろを追いかけていた弟が、こんなに強くなっていたなんて。そのことが、心から嬉しくてたまらない。死合い中にも関わらず、親バカを発揮して泣きそうになった。  次に戦ったら、今度こそ負けちゃうかもしれないね。 「…………」  遺体回収班が近づいてきて何か話しかけてきたけど、返事をしてやる気力はなかった。というか、何を話しかけているのか上手く聞き取れなかった。  フレインはゆっくりと弟の隣に寝転がり、残った左手で右手を握った。血でぬるぬるになっていたが、離れないようになるべく強く握り締める。  ――ホントは、私がお前を運んでやりたかったんだけどなぁ……。  弟の死合い時はいつもそうしている。大事な弟の身体を、他の人には運ばせたくないから。  でも、この状況ではそれもできそうにない。胴体の三分の一を斬り込まれて、そんな余裕などあるはずもない。  あと一分も経たず、自分も力尽きるだろう。  ――今回はほぼ引き分けだね、アクセル。  弟の方が、力尽きるのがほんの少し早かっただけ。  最期までこちらを殺そうとする気力、諦めない闘志は見事だった。  お前のそういうところ、お兄ちゃんは大好きだよ。 「一緒に棺まで……運んで、ね……。できれば隣同士で、よろし、く……」  遺体回収班にそう念を押し、フレインも目を閉じた。  ああ、楽しかった。時間にすれば短い間だったけど、本当に濃厚な時を過ごせた。  復活したらお前は鍛錬に勤しむだろうから、お兄ちゃんも頑張って鍛錬するよ。  そして、いつかまた死合おうね、アクセル……。

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