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第2275話(ジーク視点)
死合いが終わったので、一度会場を整備するためにスタジアムの観客も含めて退場することになった。
ジークも帰るつもりだったのだが、広場にいる遺体回収班が四苦八苦しているのを見かけて、「お?」と思った。
気になったので、下りて行って声をかけてやった。
「おい、どうしたんだ?」
「あっ、ジーク様……。実は彼らの手が、このままの状態で硬まっちゃってて……」
見れば、地面にはボロボロになったアクセルとフレインの遺体が転がっている。
両者とも片腕がなかったり胴体が千切れたりしていたが、残った右手と左手でしっかり繋がれているようだった。恋人のような手の繋ぎ方になっており、どう頑張っても引き剥がせないでいるらしい。
「あー、それ『死後硬直』ってやつだっけー? 激しく動き回った後に死ぬと、身体がすぐにカッチカチになっちゃうんだよねー」
後ろからミューも、ペロペロキャンディー片手にやってくる。
ミューも先程の死合いを楽しんでいたようで、「僕もいつか、あんな風に戦える相手が欲しいなー」などと言っていた。
もっともミューは強すぎるから、対等に死合える相手など現れないだろうが。
――にしても、死ぬ時まで仲良しだよな……こいつら。
手を繋ぎながら死ぬなんて、どこまでも見せつけてくれる。死合い中も血の口付けを交わしていたし、一体何を見せられているんだろうと若干呆れてしまったものだ。
どこまでもラブラブで節操がないのが、この兄弟の特徴かもしれない。
ジークはやれやれと首を振り、遺体回収班に指示を出した。
「一緒に運んでやれ。無理に離したらフレインに恨まれる。いっそのこと、大きめの荷台にでも乗せてやればいいだろ」
「は、はい……」
「でもさー、棺に入れる時はさすがに離さないといけないでしょ? 棺は一人しか入れないんだしー」
それはごもっとも。
どうしても離せなければ、どちらかの手首を切り落とすしかない。
死後硬直が解かれるまで待つという方法もあるが、このズタボロの死体をそのまま放置しておくのもぞっとしない話である。できることなら、さっさと棺に放り込んでしまいたい。
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