2279 / 2296

第2279話

 それはまた随分と世話をかけてしまったようだ。後で礼を言っておかなくては。  立ち上がり、棺から出て自分の全身を確認する。特におかしなところはなく、いつもと同じように手も足も動いた。傷が残っている感じもしない。 「さて、それじゃあ帰ろうか」  兄にそう促されたので、アクセルは念のために尋ねた。 「兄上はちゃんと蘇生できたか? 完治してないまま早く目覚めたりしてないだろうな?」 「大丈夫、ちゃんと完治してるよ。何なら、後で確かめてみるかい?」  思わせぶりな台詞を囁かれたが、今はあえてスルーしておく。  二人で館を出たら、日差しがやけに眩しく感じた。青い空がいつも以上に綺麗だった。  仲良く家に帰り、真っ先にベランダを覗く。  作り置きしていた食事はすっかりなくなっていて、ピピもカメも待ちかねたようにこちらに寄ってきた。 「ただいま。二人共、いい子で留守番してたか?」 「ぴー……」 「……グァ」  どちらもちょっと元気がない。  カメはともかく、ピピは帰って来た途端じゃれついてくるのに、今日はそれもなかった。  おかしいなと思って首をかしげたが、とあることに思い至って恐る恐る聞いてみた。 「あのさ。俺たち、一体何日留守にしてた?」 「……みっか」 「えっ……?」 「だから三日ですよ。作り置きの食事が一日分しかなかったので、もう二日も何も食べておりません」 「えええ!?」  やはりそういうことだったか。  起きたのが昼間だったから翌日だと思い込んでいたが、実際は三日も経っていたらしい。 「ご、ごめん……! 今すぐ何か作ってくるから……!」  慌ててキッチンに駆け込み、食料庫にあった野菜や干し肉、その他使えそうな食材は全部切り刻んで大鍋に放り込む。  手早く水と煮込んで適当に味付けし、出来立てホヤホヤの肉野菜スープを抱えてベランダに出た。一緒に余っていたパンも出し、二日ぶりの食事を与えてやる。  ピピとカメは我先にと食事にありつき、一〇分もしないうちにパンとスープを完食してしまった。

ともだちにシェアしよう!