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第11話
「そんな……あっ」
乳首を緩急をつけて揉み込まれ、頭の中がクラクラする。
「薄桃色の乳首、可愛いわあ。尾宮ちゃんのイメージぴったりな、可憐な色や」
弱いところを攻められて、背筋がぞわりと粟だった。
「そんなこと……言わないでください」
「嫌がるフリがうまいなぁ。あれ? 乳首が尖り始めてるやないの。最初の時より体も柔こうなっとるし、ほんま、感じやすい体やなあ」
山田社長はクスクス笑いながら、執拗に危険な箇所ばかりを弄っている。
「あ……ちょ……ま……」
自分でも情けなく思えてしまうほど、声が濡れ始めている。
伸ばされた舌が、乳首の周辺をねっとりと舐め、体から一気に力が抜ける。
「あ……あ」
「乳首だけであんあん言うて、違うとこ触ったらどうなるんやろなあ」
大きな手のひらが、下腹に移動し、布地越しの俺のものを鷲掴みにした。
「ひあっ……そこは……」
「思った通り……硬とうなっとるわ。いやらしい体や」
山田社長はゆっくりと男根を扱き始めた。
「うっ……」
くっきりとした快感が立ち上がってくる。
「気持ちええやろ。薬が効いて、もう、たまらんなっとるはずや」
山田社長はほくそ笑むと、ズボンのジッパーを一気に降ろした。
「うわっ……」
「ほら、可愛らしく立ち上がって。今から慰めてやるさかいな」
子供に言い聞かせるみたいな甘ったるい声でそう言うと、社長は俺のを強弱をつけて擦り始めた。
「うっ……やめ……」
甲高い声が唇からこぼれる。瞼の裏に白い星がいくつも瞬き、先端から先走りの汁が吹き出してきた。
(こんなに早く……薬のせいだ……)
後孔が何かを求めてじくじくと疼く。
「美味そうになってからに……たまらんなぁ」
山田社長が前をくつろげた。
黒光りのするものに、俺は思わず唾を飲む。だめだ。体中を小さな虫が這い回っているみたいにぞわぞわする。こんなに大きなものが、俺の中に埋められるなんて……。
主任で感覚を知っているだけに、余計に体が熱くなってしまう。怖いだけじゃない。
心は本気で嫌がってるのに、体は……。
(完璧に感じてる……)
なんて情けないんだ。
まじで、この場から消えてしまいたい。
「ひいひいわしたる……俺の体なしには、おれんようにしてやるからな」
優しい、とも言えるほどの甘ったるい声で囁くと、山田社長は手錠を外してくれた。
もう、逃げないという判断だろう。社長の考えている通り、俺の体は薬と手技とですっかり蕩け、次の行為を待ちわびていた。
と、その時、ブザーが鳴った。
山田社長がはっとしたように後ろを振り向く。
「こんな夜中に……あいつか? なら、決着つけるええ機会かもな」
社長は主任が来たと思ったらしい。
(いや、多分慎太郎だ。だけどチャンスだ)
「いえ、大学同期です。警察官ですよ」
俺は朦朧とする意識を必死に立て直して、社長に告げた。
もちろん嘘だが、この際、そんなことどうでもいい。
「警察?」
さすがに動揺したらしく、社長の目が左右に激しく揺れている。
「今俺が大声を出したら、ドアを蹴破って入ってきます。今すぐ、ベランダから出て行ってください。そうしたら……許しますから」
その言葉は本音だった。俺はできるだけ穏便にことを済ませたかった。
もともと平和主義だからってのもあるけど、それだけじゃない。
山田社長のことが、今でもまだ、嫌いじゃないんだ。
乱暴で強引だけど、心底悪い人じゃないと思う。
気持ちが落ち着いたらきっと、心を入れ替えてくれるはずだ。甘ちゃんって笑われるかもしれないけど、俺は本気でそう思っていた。
社長はちっと舌打ちをした。
「しゃあないなぁ……」
社長は素早くベッドから飛び降り、シャツを身につけた。
「……続きはまた今度や」
捨て台詞を残し、社長がカーテンの向こう側に消える。
たん、という、人の体が地面に落ちる音がして、俺は大きなため息をついた。
(ここ二階だけど、大丈夫だよな……ってか、強姦魔より自分の心配だろ……)
またブザーが鳴った。
「はいはい。ちょっと待って」
俺は玄関に向かって叫ぶと、ヨロヨロしながら衣服を身につけた。
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