3 / 25
甘い嘘
朝……
君がベッドで目覚めた時、
寂しくないように僕は小さな嘘をつく
「おまえ、いつ起きたんだよ」
「おはよう……今だよ」
そう隣に寝てる君に囁き、そっと後ろから抱きしめた。
「あのさぁ……」
振り向くことなくため息混じりに君が呟くと、君の首筋に顔をうずめながら僕は優しく返事をする。
「なに?」
すると不機嫌そうに、でも少し照れたような口調の君が、
「毎朝嘘つくなって……ほら、コーヒーの匂いするし、トーストが焼けた匂いだってする」
そう話の続きを口にした。
「気の所為じゃない?」
「んなわけあるかよ、どうして毎朝俺より先に起きてるくせに嘘つくんだ……」
そして僕はその答えを口にしない代わりに、小さく息を吐く。
「お、おい、無言にならないでなんか言えよ」
「だって……言ってもいいの?」
「そうさっきから言ってるだろっ」
少しムキになる君が可愛くて暫くそのまま無言でいると、身体を捩りながら僕の腕から逃げようとして、
「もういい。だから離れろ、鬱陶しい」
そう君は可愛い嘘をつく。
ホントに君は……
素直じゃないのがどうしようもないくらい可愛い。
だから、そんな君の腕を引いてそのまま勢いよく組み敷き見下ろすと、僕はゆっくりと顔を近付け、こう続きを口にするんだ。
「……理由なんて、君が一番分かってるくせに」
すると、真っ赤な顔に色付いた君が視線を反らし、知らない……とまた嘘をつく。
君の嘘は甘くて甘くて……
それは僕を溶かしてしまいそうなほどだ……
「虫歯になりそうだな」
「は?」
「いや、なんでもないよ」
だから僕は、きっと明日もまた同じ嘘をつくのだろう……
────君からの甘い嘘を楽しむために……
ともだちにシェアしよう!