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ボーダーライン
「ここ、寝癖」
「わざとだ、触るな」
いつもの朝の日常、いつもの学校、いつもの会話。
俺がコイツにちょっかいを出すのもいつも通り。
「わざと寝癖付けるってどんだけだよ」
「煩いな、そこどいて」
下駄箱に下履を入れて上履きに履き替えながら今日もブツブツと文句を言うコイツが……
「なぁ?」
「なんだよ」
「今日授業サボろうか」
「は?」
「2号館の空き教室行こう」
「ちょっ、手……」
……なんかもう、色々と。
「こんなとこ連れて来て、何なんだよ」
「何って言われてもなぁ……なんとなく」
「はぁ?先生に見つかったらヤバいだろ」
「うん、ヤバいけど、それ以上に俺がヤバいし、限界」
「な、なに言ってんだ」
ずっと気付かないとでも思ってたのかなぁ……
「俺のこと好きなお前見てるのが……限界」
埃臭い教室のずっと使われていない黒板に追いやりながら、ずっと抱えていた気持ちを吐き出すと、泣きそうな顔をされた。
「……な、んで」
「お前さ、わかりやすいんだよ。これだってわざとだろ?」
そう言ってぴょんと跳ねた髪に触れると顔がみるみるうちに真っ赤になる。
「だ、だからわざとって……」
「違うだろ、寝癖直さないのがわざとだろ?俺にこうされたくて……て、髪、意外と柔らかいな」
「触るなっ、これ以上……」
「さっき言ったじゃん?限界だって」
「お前は……そうやっていっつも俺の心をかき乱す……」
それはこっちのセリフだっつーの。
今、この瞬間もこいつは俺の心をざわつかせ、理性とか全部吹っ飛びそうになる。
「なぁ、俺がこのまま床に押し倒したら、もっと俺でいっぱいになってくれんの?」
「……ッ……そ、それは……ッ……ちょっ……なにッ……やめッ」
可愛いとか甘やかしたいとか溢れる感情はとめどない。
だけど、それ以上に俺に夢中になって全部俺だけになったらいいのに。
「……ッ……俺のこと好きだろ?」
「……言わない」
「可愛くないな、ほんとにもう」
「俺は……!これ以上……生活に支障を出したくないん……だよ」
それって、十分……
「やっぱ俺のこと好きなんじゃん」
「だからっ!」
「俺に夢中で嬉しいな」
「だから違うって……ッ!」
無自覚ほど破壊力がすごいこと……多分わかってないよな。
「俺はそんなお前が好きだよ」
「や、やめろッ」
毎日一緒にいて、毎日視線感じて、こんに可愛い顔して否定されても自惚れするなって言う方が無理だろう?
そんなことを頭の片隅で思い浮かべると、俺は再び口を塞いでその柔らかい髪を撫でながらゆっくりと愛しさを味わった。
END
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