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七夕&渚の誕生日SS/2012版~優人×渚
*2012年に書いた「惑わすアイツは生徒会長」の優人×渚の七夕&渚の誕生日SSになります。
本編未読でも楽しめます。
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『天の川越しに見えるキミ』
*渚視点
「………おまえ、晴れ男って言ってなかったっけ……」
「晴れ男だよ!てめーが最強の雨男なんじゃねーの?!」
「知るかっ!」
今日は7月7日…ちまたでは七夕だ。
だけど、今日はもう一つ大事なイベントがある。
「七夕だし、誕生日だしなのに雨ってありえねー」
……そう、今日は俺の誕生日でもある。
せっかく天の川を見ながらケーキでも食おうとせっせと準備したのに……外は結構な雨が降ってやがる。
「あーあ……つまんねーの。」
「渚……そう拗ねるなよ。雨でも天の川見えるとこ行けば問題ないだろ?」
「え?!そんなとこあんの?!」
「あるよ。」
「え!?どこだよ!!」
ガラス窓にへばりついて雨空を眺めている俺の手を取り、橘はその…ある場所へ歩きだした。
*
「…………お、おい。ちょっと聞きたいんだけど……ここがおまえが言った場所?」
「そう。何かご不満でも?」
「……不満も何も…ここ……寝室…だし。さっさと寝て夢で天の川見ろってか?」
「渚、今日冴えてんじゃん。」
……マジかよ。
こいつイタ過ぎる……
「……てのは冗談で、これ……」
クスクスと笑いながら俺をベッドに座らせると、おもむろに部屋の電気を消し、真っ暗に。
そして、次の瞬間――
「……え……何…これ…」
真っ暗な部屋が一瞬でキラキラし始め、見上げた天井には……
満天の天の川が架かっていた――
「……す、すげー!!」
「渚、誕生日おめでとう……これ、気に入ってくれた?」
「う、うん!これ、うちでもプラネタリウム見れるやつじゃん。……でも、こんな乙女アイテムよく持ってたな。」
「オレのじゃねーよ。友達に借りたんだ。」
「おまえにそんな友達居たっけ?」
「友達っつーか、腐れ縁つーか……まぁ、渚にも後で教えてやるよ。」
「えー誰だろ……ほっしー?」
「ダイじゃねーよ。」
「えーあと誰か居たっ……ちょっ!!」
「誰だっていいだろ?後で教えてやるって言ってんだから。それより…もっと考えることあるだろ。」
ベッドに座る俺をそのまま押し倒し、顔をグッと近づけてくるとそんな事を言い出した。
「もーいきなり押し倒すなよ!!考えることってなに!」
「ベランダにある笹の葉に付けた願い事の短冊……なんでアイスネタなんだよ。もっとあるだろ、他に書く事が。」
急激に顔が熱くなる。
だって、アイツのみたいに素直に書けるわけがない。
何も言えず固まってる俺に、チュッとリップ音をたてたキスをした後、すげーエロい顔で更に迫ってきた。
「……渚が書いてくれねーからオレが書いたんだぜ?」
「……あれ、飾ったの?」
「当たり前じゃん」
何かの拍子に笹から落ちて、誰かに見られたらと思うとすげー恥ずかしい!
「俺、ちょっとベランダ行ってくる。」
「何言ってんだよ、逃げるな!」
「だって恥ずかしいし!」
「別に恥ずかしくねーだろ。渚は来年もオレと一緒に天の川見て、誕生日祝いたくねーの?」
「……見たいし……祝いたい……」
そんなの…当たり前だし、確かにそれも大事だけど、実は俺には短冊に願いを込めたいことが他にもう一つある。
それは……
「見たいし、祝いたいなら大人しくオレの側にいろ!」
俺にはそれもとても大事なこと……
「……もー。仕方ねーから居てやるよ…つーか、顔近づけ過ぎ!天の川見えない!!」
「……はい、はい。」
青い薄明かりに浮かび上がる天の川越しの橘は、めちゃくちゃ格好よくて、今はもう少しこうして見つめていたいって思った。
だから、あとでこっそり付けてこよう……雨に濡れた笹の葉に。
そう、俺のホントの願い。
『“優人”って、もっともっと呼んあげられますように……毎日、一番近くで。』
それが今一番の、俺の願い事。
END
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