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アディクション・ルージュ~2020七夕SS~
*こちらは、Twitterに投稿した七夕SSとなります。アディクション本編後のある七夕の日の設定です。
スパダリ使用人:神楽坂 連
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強気御曹司:姫宮 梨人
***
雨は嫌いじゃない。
けど、今日ばかりは晴れて欲しいと願うのは自分だけではないはずだ。
「梨人様がそんなことを思っているなんて意外でした」
「だって、一年に一回しか会えないなんて辛すぎるだろ」
今日は七夕だと言う話の流れから、案の定そういう話題になるわけで……
「前から思ってましたけど、結構ロマンチストですよね」
「あのなぁ、その言葉そっくりそのままお前に返してやる。どうしたらあんな回りくどいこと思いつくのか……」
窓の外、土砂降りの庭に視線を移すと、ついこの間のことのように思い出す……あの夏の日のこと。
「告白のことですか?それともプロポーズのことを……」
「ど、どっちもだよ!プロポーズとかしれっと言うんじゃねーよっ」
「梨人様が先に言い出したんじゃないですか」
余裕な神楽坂を見ていたら、なぜ自分ばっかりがと余計に恥ずかしさが込み上げてくる。切り替える上手い言葉も見つからない俺は早々に視線を外すと次の瞬間、視界は真っ暗になった。
「……っ……ん……お、おい……」
「……っ……なにか?」
くちづけと一緒に触れられた薬指、そして柔らかな声。
クスッと控えめに笑う声が間近で聞こえると、反応を楽しむかのように神楽坂が再び俺の口を塞いだ。
「……な、な……んだよ……いきなりっ」
「幸せを噛みしめておりました」
「幸せって……。真顔で言うなよ、恥ずかしい」
「以前は、こうしてお傍にいても触れることも出来ない……ましてや、くちづけなど。それはとても近くて遠い存在でしたから。今がとても幸せなんです、察してください」
一年に一度しか会えない辛さ。
近くにいるのに触れられず、想いも告げられない辛さ。
どっちがマシかなんてない。だからこそ、神楽坂が今が幸せだと口にしたくなる気持ちはよくわかる……俺だってそうだったから。
「雨……止むといいな」
「きっと大丈夫です。今頃は私たちのように、二人は一緒に居るはずです」
絡まる視線の先に潜む熱を持て余すように、俺たちは指先を絡ませたまま交わす言葉の合間にくちづけを繰り返す。
お互いの存在を、幸せを、実感するかのように何度も……何度も……
END
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