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4一7
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拓也と瞬のヘッドホンには中の会話が聞こえてきているのだろうか。
(……初めてまともに話す人だし…話し掛けにくいなぁ…)
まだ隣の拓也は話しやすそうだが、無口っぽく一番怖そうな瞬は論外だった。
中の会話を聞いてみたいのに、由宇は一人蚊帳の外な気がして縋るように拓也をジッと見詰める。
そのまん丸な瞳に気付いた拓也は一回吹き出した後、小声で「チワワちゃんも聞いてみる?」とヘッドホンを手渡してくれた。
「ありがとうございますっ」
車内の雰囲気にのっとって、由宇も小声で拓也に礼を言うと、早速耳にあてがってみた。
すると、非常に遠くの方だが間違いなく会話が聞こえてきて、思わず息を呑んだ。
『……〜気はないよ。 君達の結婚の話も知っているが、本人達の気持ちが大事だろう?』
『だからって逃げ続けても解決にならんだろーが。 まず一つ一つ解決してから突っ走れや』
『……橘さん、私どうしたらいいのかしら…?』
『あんたはまず親元へ帰れ』
『園田さんと離れたくないもの……』
『お前らさぁ、自分達の事しか見えてねーのな。 周りはどうだっていんだ? それなら俺も強行突破するけど?』
『何をする気だ』
『結婚時期を早める。 そんで海外行く。 お前らが解決に協力しねーなら、それしかねーな』
『そんな………!』
『嫌よ!!』
今の会話で十分過ぎるほど事態を理解した。
すべて橘の憶測が当たっている。
(二人はもう愛し合っちゃってるんだ…!)
不倫ドラマのような展開に、これは現実なのかと目の前の拓也を見ると、渋い顔で由宇を見詰めていた。
これから先どうするべきかの道筋は見えても、怜と怜の母親の事を少しも鑑みない二人の発言はまるで独りよがりである。
不倫を悪い事だと思っていない節に、ふと怜の事が浮かんだ由宇は鼻を啜り始めた。
「…さーて。 どうするのかな、風助さん」
拓也達三人は顔を見合わせて、うるうるしている由宇からヘッドホンを優しく奪う。
(俺がこうなるって分かってんだ、先生……)
二人の関係を知っていた橘は、怜と蜜に友人である由宇がこの事実を知った時、必ず涙を流すと分かっていたのだ。
オトナの汚えとこ見せたくない、橘はそう言っていた。
周りが見えなくなるほどの愛により、守るべき大切な家族を蔑ろにする矛盾した汚さ…。
(こんなのヒドイ……ヒドイよ…!!)
橘が婚約者と結婚しても、何の解決にもならない気がした。
二人に少しでも罪の意識がある発言をしてくれればまだ救われたのに、由宇が聞いた会話ではそんなもの当然のように無くて、むしろ何故いけない事なのか?と逆に問うてきそうなほどであった。
「あー…っと。 …風助さんキレる五秒前」
「…………へ?」
呆然としていた由宇の隣で、ヘッドホンで中の様子を聞いていた拓也が急にカウントダウンを始めた。
瞬が「あーあ」と初めて声を聞かせてくれたと思った次の瞬間ーーー。
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