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第4話

 アザミの、瑞々しくも赤い先端から、白濁が吐き出された。  絶頂の快感を、腰を震わせて堪能する暇も与えず、西園寺は乳首だけで達したアザミの、後孔へと己の猛った欲望をねじこんだ。  後孔と会陰部に作ってあった結び目は邪魔になったので、そこだけを解いた。余裕の出来た縄は少し緩んだが、胸を縊り出している縄や、両足を縛っている部分はそのままで、アザミの自由は依然として奪われたままである。  激しくうねるアザミの中が、西園寺に絡みついてくる。 「ああっ、ま、待ってっ」  突然の挿入に、アザミが逃げようとする素振りを見せたが、縄を打たれた不自由な体は、シーツの上を滑っただけだった。  深々と貫かれたアザミの腹部が、淫靡に波打った。達したばかりなのに内側から前立腺をごりごりと擦られてはたまらないだろう。 「あっ、イくっ、またイくっ」  ビクンっ、と細い体が魚のように跳ねた。   「そうやって、イきっぱなしになるところは、マツバと同じだな、アザミ?」    意地悪く、そう囁いて。  西園寺は縛られて開きっぱなしになったアザミの足の間に、腰を強く打ちつけた。  アザミが唯一自由になる頭を左右に振り、喘ぎを零す。  彼の長い髪が、白いシーツの上で揺れる度に、パサパサと乾いた音が密やかに響いた。    西園寺の牡を受け入れている肉筒は、絶妙な締め付けで、引き抜こうとするとペニスを留めておこうとするようにすぼまり、押し入るとやわらかくどこまでも受け止めてくれるような動きを見せる。  目元をうっすらと色づかせて、生理的な涙を滲ませているアザミはうつくしく、開いた唇から漏れる吐息ですらも、たとえようのない色香を感じさせた。  他の客に対しては、上に乗り奔放に腰を振ってマウントをとっているであろうアザミを、こうして縛り、組み敷いているという事実が、西園寺の理性を(とろ)かせる。  まだ青く若い実のようなマツバと違い、アザミの体は熟れ切った果実のそれだった。 「ああっ、あっ、あっ、ふ、深いっ」  ひっきりなしにアザミは嬌声をあげる。  恥じらうようにすすり泣くマツバとは、そういうところも違って、けれど西園寺を興ざめさせるような振る舞いではないのだから、さすが、男を悦ばせる手管に長けた男娼だ、と西園寺はアザミを責めながら思った。  アザミの細腰を掴み、ばちゅん、ばちゅん、とペニスをピストンさせる。  触れられてもないアザミの性器からは、とろり、とろりと白濁が漏れ続けて、激しくうねる内部と合わせて彼が絶頂から戻ってこれていないことを西園寺に教えてきた。 「ひっ、あっ、こ、こわれるっ、あっ、あっ、さ、さいおんじ、さまっ」 「どうした」 「あっ、アザミ、のっ、あっ、あっ、孔がっ、こ、こわれますっ」 「これぐらい、大丈夫だろう?」  言いながら、西園寺は肉棒をさらに深い場所まで届かせるように、アザミへと体重をかけ、己の牡で奥の奥を暴いた。 「ああーっ、あっ、だ、だめ、ですっ、あっ、ああっ」  深々と挿したそれで行き止まりのような場所をとんとんと突くと、アザミが体を震わせてひと際高い嬌声を上げた。  西園寺はさらに、ぬくっ、とその先へペニスを捻じ込んだ。 「んあああっ、あっ、し、死ぬっ、あっ、ふ、深いっ」  奥で感じる快感は、前立腺へのそれと同じか、それ以上だと耳にする。  全身をピンクに染めて全身を痙攣させているアザミを見れば、その快感の凄まじさは一目瞭然であった。  西園寺は最奥で腰を小刻みに動かし、アザミの孔の締まりを堪能してから、激しい抽送を始めた。  パンっ、パンっ、と音を立てて律動を続けながら、腫れたアザミの乳首を引っ張った。 「ああーっ、あぅっ、イ、イくっ、だ、だめっ、イくっ、イくっ」 「アザミ。俺も出すから、こぼすなよ」  西園寺はそう命じて、自身の快感を追うべく好きにアザミの中を動き回り、限界まで昂ぶったその欲望を、彼の中に解き放った。 「あっ……あっ」  ビクン、ビクン、と大きな震えとともに、アザミも絶頂を味わっているようだ。  とろり、と少量の白濁が、アザミの性器の先端から漏れていた。  西園寺は繋がったままでアザミの肌を這っていた赤い縄を解いた。  うっすらと縄目の残る肌は艶めかしくて、永遠に消えないような痕を残したい気持ちにもさせられた。  いまだ快感が引き切らない震えを見せる手足を、布団の上に投げ出して。  アザミが恍惚とした表情を見せている。  そのアザミの中から、西園寺は無造作に己を引き抜いた。  こぽり、と白濁が溢れかける。 「こぼすな」  西園寺の短い命令に、アザミが子犬のような声をあげて、後孔を締めた。 「俺が帰り支度を終えるまで、そうしていろ」 「……はい」  西園寺は横たわるアザミから体を離し、軽く下半身を拭うと、衣類を身に纏い始めた。  本来であれば客の身支度を手伝うのは男娼の役割だ。  しかしアザミは、体にちからが入らないのか、それとも精液を零すなと言った西園寺の命令を遵守するためにか、しどけない裸体を横たえたままだった。  西園寺がネクタイを締め、隙のないスーツ姿になった頃、彼はようやくその身を起こした。 「もういいぞ、アザミ」 「はい……」  西園寺のゆるしを得て、アザミが腹の辺りのちからを抜いた。  彼の後孔から漏れた白濁が、シーツの上に染みを作った。アザミがゆっくりと立ち上がると、糸を引くようにそれがぬめり、ポタポタと新たな精液が落ちた。 「縄の痕は、大丈夫か?」 「はい」 「痛むところはないか?」 「はい」  アザミは西園寺の問いに頷きを返し、白い手首をさすると艶然と微笑した。 「西園寺様。アザミの体はいかがでしたか?」  男娼の質問を、西園寺は鼻で笑う。  良かった、と答えても、男娼の具合がいいのは当然で、大した褒め言葉ではないだろうと思えた。  それとも、マツバよりも良かった、と言わせたいのだろうか。    西園寺がちらとアザミに視線を流すと、アザミは長い睫毛を伏せて瞬いた。そして、うつくしい双眸に西園寺を映し、挑発的に赤い唇を歪める。 「西園寺様。アザミは乳首で達したことなどこれまでに幾度もありますし、縛られることにも慣れております」    西園寺は目を眇めて、嗤う男娼を睨んだ。   

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