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好き-3
月曜日。
……ナツオと舞は、ぎこちなかった……
顔を合わせれば、会話を弾ませピンポンラリーを続ける二人が
今日は、目線すら、合わせない……
「………」
三人机を合わせ、食べるお弁当の味が……今日は、しない……
「……どうして土曜日、来なかったの?」
ナツオが早々に席を離れ、他の男子グループに混ざった時だった。
舞の瞳は、何処か僕を責め立てる。
「………」
「ナツオに、言われたから?」
何も答えない僕に呆れたのか、その視線が横に外された。
寂しそうな瞳。苦しそうに漏らす、溜め息。
「そのせいで、あたし……」
小さく動く、唇。
「……あたし、」
意を決したように、机に置かれた舞の手がギュッと強く握られる。
「……ナツオに、告られちゃったじゃん……」
……え……
その言葉が棘へと変わり、チクリと胸に突き刺さる。
蘇る、あの時の光景……
絡む指。繋いだ手。
去って行く二人の背中。
あの後、ナツオは……
向き合う二人の横顔。見つめる瞳。
近い距離で、お互い微笑む……
そんな姿を……想像してしまった……
「………」
棘が、奥に食い込む。
苦しくて……上手く、息ができない……
「でも私、ちゃんと断ったから……」
全てを飲み込んだかの様に、舞の口角が上がる。
……だけど寂しそうな瞳は変わらない。寧ろ色を濃くし、僕を映す。
「さくらくんが、好きだから……」
その瞳の悲しい色が、揺れる。
予想外の言葉。
……どう、して……
目の前が、ぐらぐらして……現実の境がわからない……
「本当だよ!
あたし、さくらくんが……好きなのっ、……」
舞が、僕の方へと身を乗り出す。
必死な声。瞳の色。
少し上げた口角。
………けど、その表情は、痛々しい程寂しそうで……
「……僕、は……」
やっとの事で、声を絞り出す。
……だけど、それ以上言葉が出てこなくて……
「……解ってるよ」
少し俯いた舞が、口角を更に上げ笑顔を貼り付ける。
……痛々しい程に……必死で……
「解ってる、から……」
それだけ言うと、舞がスッと立ち上がる。
そして俯いたまま、ガタガタと机を引いて元の場所に戻した。
「………」
……どうして、僕……なんだろう……
どうして……
……変わっていく……
均衡な距離を保ったままの、僕達三人の関係が……
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