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好き-4
舞が、女子グループに混ざっていく……
その近くでかたまってる男子グループの中には、ナツオ。
……そして、一人ぼっちの僕。
ナツオは舞を、舞は僕を
……そして僕はナツオを……想ってる……
この一方通行な思いは、決して重なり合う事なんかなくて……
まるで奇妙な正三角形。
どんなに追い掛けたとしても……決して触れ合う事もできず
……かといって、壊す事もできず……
ただ、苦しいだけの……関係……
「……なあ」
机を元に戻し、一人廊下に出て窓の外を眺めていた時だった。
背後からナツオの声がして、胸が小さく跳ねる。
「……え……」
振り返ろうとした僕の肩に、ナツオの片腕が回る。そして、グイと僕を引き寄せながら、ナツオが僕の顔を覗き込む。
瞬間、ふわりとナツオの匂いがする。
ナツオの腕の感触。息遣い……
……ドキンッ
必要以上に近い距離に、動揺した。
ナツオの整った顔。涼しげで切れ長の瞳に捕らえられ、一瞬で僕は心を鷲掴みにされてしまった……
「……な、何?」
ドキンドキン……
笑顔が上手く、作れない。
すぐに視線を逸らすものの、そう簡単に心臓は落ち着いてはくれない……
「どう思ってるんだよ」
「……えっ!」
耳元で囁かれれば、悪戯に吐息に擽られる。
一気に脳が沸騰し、触れられた所全てが……熱い……
「……舞のこと」
ずきん……
高揚する僕に、容赦なくつきつけられた、現実……
心に刺さった棘が、疼く。
「まさか、好き、とか……」
「……べ、別に」
口が上手く回らない。それでも誤解されないよう、すぐに否定する。
……なのに……
なんとなく流れる、気まずい空気……
震える指。感覚の無くなりそうな手に力を籠め、ギュッと握る。
「……僕には、他に……いるから……」
揺れてしまう瞳。
ナツオの腕の重みだけしか、感じない……
「……そっか」
少しホッとした、ナツオの声。
それと共に、ナツオの匂いと温もりが、僕から離れていく……
「………」
全身が、震える。
僕は窓枠にそっと手を掛け、力の抜けてしまった体を預けた。
……もし僕が女の子だったら
ナツオに、言えたのに……
どうして僕は、女の子じゃないんだろう……
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