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第29話

音夢side 「音夢…やっぱ麻桜ってさ…」 「違う!麻桜はそんなんじゃ…」 「おはよ。」 「ま…お…」 「どした?音夢…」 「音夢!いこうぜ」 「は?え?」 結局真相は聞けないまま悪い噂だけが一人歩きして行った。 おそらく女たちは麻桜が自分を選んでくれなかったことへの腹いせ。男たちは麻桜のせいで女ができなかったという八つ当たりや嫉妬。 俺が声をあげても誰も聞いてくれなくて…そのうち否定するのも疲れてしまって俺も麻桜と話すことはなくなった… そして麻桜の周りは誰もいなくなって…高校卒業と同時に麻桜は家をでていった。 後悔してた…最後まで俺だけは味方でいたかったのに…俺を救ってくれた麻桜を助けたかったのにって… でも結局俺はその他大勢の方に逃げたのだ…一人で麻桜を守る勇気は持ち合わせていなかったから。 ただ麻桜には味方がいるよ。大丈夫だよ。それを伝えたくてあの日から三日後より手紙を書き始めた。差出人は書けなかったけど筆跡で麻桜は誰なのか気付いていたかもしれない。少し視線を俺に投げてくれたから。でも話しかけては来なかった。 麻桜のことだ。俺が巻き込まれてしまうことを危惧したのだろう… その姿に泣けた…帰宅したら自室で泣いてた…こんなに近くにいるのに何もできない…こんなにも好きなのにどうすることもできない。あまりにも不甲斐なくて… 麻桜のこと俺はずっと恋愛的な意味で好きだったんだよ…俺ならそんな辛い思いはさせないよ…だから俺にしなよ…そんな本音も勿論伝えられるわけない… 高校卒業して大学にもいったけどどうしても麻桜のことを思い出しては後悔して… 家を出ていった麻桜を必死で探して直ぐに見つけたのだけど今さら何と声をかけたらいいかわからなくて…何度も麻桜の後をついていったけど結局声をかけられないことが続いた 麻桜はいつも一人でいた。少しでも元気になって欲しくて手紙だけじゃなくて贈り物をし始めた。 麻桜が好きだった花やお菓子や…思い出のぬいぐるみ…でもそれは麻桜は覚えていなかったろうね… 初めてあの公園で出会ったときお前がくれたものだったなんて… そんなことをしていたら大学にも行けなくなって麻桜の出勤時間と帰宅時間のみ家から出て麻桜を見詰めてた。大学は辞めた 「麻桜…麻桜…俺はまだこんなにもお前が好き…」

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