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第33話
音夢side
男が立ち去ったその直後だった。
普段は全くならないインターフォンがなった
重たい体を起こして相手を確認する
「…はい…」
『音夢…俺…麻桜』
「麻桜?…」
夢かと思った。まさか麻桜が来るなんて思わなかったから
『開けて…』
苦しそうに呟かれた声は間違うはずない…大好きな麻桜の声…夢でもいい…麻桜に会いたくて…
「うん」
頷いた
「麻桜…」
「久しぶり…」
久しぶりに近くで麻桜を見た。相変わらず綺麗で真っ直ぐで…強い眼差し…涙が溢れた…助けて…こんな訳のわからない体を駆け巡るどろどろした熱い熱い感情…俺はおかしいんだよ…
「助けて…」
「うん…」
俺を優しく抱き締めてくれた麻桜がなんだかすごく大きく感じた。同じような体躯をしていたはずなのに俺は最近外に出なくなった分筋肉も落ちてしまい前より食欲も出ないため痩せてしまったから
「音夢…遅くなってごめん…」
「麻桜…」
何がごめんなのか俺にはわからない。謝るのは俺の方だから
「ずっと…謝りたかった…ごめんね…麻桜…あの時助けられなくてごめん…離れてしまってごめん…」
「いいんだよ」
「俺…知ってたのに…お前がそんなやつじゃないってことくらい…なのに…」
「音夢。俺に励ましの手紙くれてたのお前でしょ?精神的にボロボロになった俺に。直ぐに気付いてあげられなくてごめんね」
「麻桜…」
「ずっと側にいてくれてたのに気が付かなくてごめんね…」
違うよ…気が付かないふりしてくれてたんだ。その表情見たらわかるよ。何年見つめてきたと思ってるの?
痛い痛い…苦しい苦しい…嬉しい…怖い…怖い…狂ってしまいそう…
「麻桜…俺ね最近おかしいの…」
「うん」
「自分が自分じゃないみたい…俺の中をぶわあーって真っ黒な靄が覆っていくの…怖い…」
助けて…麻桜…俺をどうなるの?元に戻りたいよ…
「ねぇ。音夢。俺のこと好きなの?」
ビックリした…気付かれているとは思ってなかった…
「…っ…ごめ…あの…」
「違う?」
…あぁ…もう…隠せない…
「…っ…あの…俺…俺はずっとお前が好きだった…えと…あの…だからね…お前には幸せになってほしくて…俺…」
「ねぇ。音夢。俺と一緒に幸せになろうか?」
「え?」
「音夢…思い出して?俺といたあの頃を」
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