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第37話
「はぁ…はぁ…くくっ…さすがですね」
「あんたもな…はぁ…はぁ…」
「…何?!…」
お互い魔力をぶつけすぎて満身創痍…次の攻撃でおそらく終わる…俺はどうしても負けられない…愛しい人が目の前で壊れ行くのを見るなんてたまったもんじゃない。
次の攻撃に移る体型を整えていると男が表情を固くした。何事かと目線を追うと先程までただうずくまっているだけだったはずの音夢が立ち上がりこちらに視線を送っていた
「そんな…ばかな…」
「麻桜。まだいけるか?」
「あぁ。任せろ」
音夢は肩で息をしている。だから強力な力が使えるのはおそらく一度…音夢の持っている力は強大だから…
「麻桜!一撃で仕留める」
「了解」
音夢が黒い光を作り出す。音夢が一番得意とする闇魔法。それに俺の光魔法を融合。更に音夢が雷を纏わせその上に炎を纏わせ火の玉を作り出した。それに俺の最後の力を放ち織り交ぜる。
「「滅せよ!!はぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
その刹那男は塵となり消えた。それと同時に音夢に絡み付いていた黒い薔薇の蔓達が崩れ落ちる。大輪の花の中心にいた音夢が下降する。
「音夢!!」
地面に叩きつけられる寸でのところで受け止める。
「音夢!音夢!!」
「…ま…お…ぶじ…?」
「あぁ。お前のお陰でね」
「ふふ…良かった…」
「音夢!」
「ごめん…全部思い出したよ。でもね…もう無理みたい…だから早く封印して?」
「音夢。愛してる…」
そっと口付ける
「麻桜…嬉しい…俺も愛してる…」
幸せそうに微笑んで目を閉じる音夢を抱き締めることしかできなくて…
唇を重ねていたはずの音夢の姿が霞んでいく
「音夢!音夢!」
ねぇ…あの伝承は伝承でしかないのですか?
俺たちはこんなに愛し合っているのにどうして引き離すのですか?
どうして音夢を…
「音夢!あぁぁぁぁぁ!!」
膝から崩れ落ちた俺はただ只管に涙した。子供のように大声を上げて…
天を仰ぎ更に拡大する黒い闇をただ見ていた…魔王になったときに封じるための準備を…
もう力もうまく入らない足を無理矢理に立たせ闇の塊を見据えた
徐々に形を作り出す姿に向かい伝承されてきた言葉を唱える。
またこれをすることになるとは思いもしなかった…
「音夢…さようなら…」
もうきっと己を失っている音夢には聞こえないだろう…
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