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第39話
「…何?」
闇の塊の中心が淡く輝きだす。前回の封印では見られなかったことが今起こっている。
不思議に思い一旦唱えていた言葉を止めて手を下ろす
「何が起こって?」
いつしか光の塊が闇の塊を覆いつくし星屑が降り注ぐ。キラキラと舞い落ちる光景はさながら粉雪のようだ。
「綺麗…」
その星屑たちはキラキラと世界を染め上げて先程まで荒れ狂っていた世界が穏になり枯れ朽ちた木々達が色を取り戻していく。
濁りきった沼や川や湖も鏡のように光を取り戻した
消えてしまったはずの小さな命たちも歌い出して…
「麻桜…」
愛しい人の声が俺の名を呼ぶ
「…ね…む…」
「ただいま…全て終わったよ。」
そう言い微笑むとそっと俺を抱き締める。抱き締められた俺の怪我や疲労は瞬く間に消え失せてボロボロになった聖服も元通り…
「再生の力をもらったの」
不思議そうにしたのがわかったのか音夢が告げた
「…もらった?」
「大天使様と魔王様にお会いしたの」
「え?」
「もう…全て終わったんだってお二人仲良く寄り添いながら微笑んでらした」
「…」
「もうあの忌まわしい呪いから解放してくれるんだって。魔界も天界も夢世界も人界ももう脅かされることはないんだよ」
「そうか…」
「それと…一旦夢世界に戻ろう。あの場所へ向かいたい」
あの場所と言うのはおそらく聖なる泉のことだろう
「いい?」
「うん」
そう言うと音夢が俺を抱き締めたまましたに降りていく。フワフワフワフワとタンポポの綿毛のように
「…」
泉に戻るとそこには夢叶や長や他の民たちがいて泉の中央の台座に横たわる人を見つめていた
「麻桜くん…音夢さん…」
「夢叶…これは…」
そう声をかけるとポロポロと大きな瞳から涙がこぼれ落ちた
「希叶さんが…」
「おかえり…麻桜…音夢…」
「希叶…」
「お待たせ。希叶。君へ大天使様より贈り物だよ」
音夢と同じ姿をした希叶へ音夢は手を翳す。ふわりと空に浮かんだ希叶
「苦しい思いをさせてごめん…でも…俺は麻桜を譲れないよ」
「わかっています…大丈夫です…俺には夢叶がいるから…」
そんな会話は俺たちには聞こえないけれど2人で柔らかく笑っていた。
再度台座に降りてきた希叶がゆっくりと体を起こした。
「…夢叶…手を貸してくれる?」
「はい!」
涙に濡れた顔に満面の笑みを浮かべて夢叶が希叶の元へ歩みを進めた。
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