5 / 36

(5)隣人トラブルはまず大家まで

何が起こったか。 まずキレた赤髪の左右田が角眼鏡こと右近を殴ろうとした。 そのまま眼鏡が割れるかとおもったらどっこい、殴りかかった腕を絡み取ってひねり、ひねり上げたのか?おそらく捻り上げて左右田を無力化したんだと思う。曖昧なのは仕方ない、本当に素早かった。 「お前の方が強いんかい」 「ん?あなた誰です」 「ギブギブギブぐぁああ」 うーん見事な片羽絞め。 じゃなくて。 1人ツッコミをしているその間に茂竿が後ろから補足をしてくれた。 「右近、この人が新しい大家さん」 「ああ。え?この方が?」 「………」 「そうです、大矢っていいます」 「驚きました。もっと年配の方が来られると」 「………」 「ねえ右近。左右田さん泡ふいてない?」 「おや」 左右田は真っ青な顔で泡をカニのように出していた。 落ちた左右田に活を入れる。 ほっとくと危ないしな。素人はやっちゃダメだぞ。 「っヒュ、ンゲホ、ゲホッゴホ!!て、んめぇ右近クソ野郎!!」 「本心ではないですがすみませんでした」 「アァ??!」 うーん、大丈夫そうだ。 また口論が始まりそうだったので俺から2人に話題をふった。 「なんであんた達ここで口論してたんだ?何かトラブルなら俺に言ってくれ」 隣人間のトラブル解決を手助けするのも大家の仕事だ。爺さんのメモにあった。直接出向いたりすると話がよりこじれることがあるので大家、あるいは管理会社を通じて話をつけよう。 この2人は手遅れだが、ダメージ軽減くらいはしてあげられるだろう。 「トラブルも何も、そんなたいした話ではないですよ」 「いいからいいから、な?」 「……。…、…靴です」 靴。 そう言われてると自然に足元に注意がいく。 右近は流石インテリ(にみえる)だけあって清潔感のある靴をはいている。 左右田は…かかとを踏んでる。あとヨレヨレ。 「そっちでななく、周りの方です」 周り。 周り、というと…。 そこまで広くはない玄関土足エリアを改めて見てみた。 サンダル、スポーツシューズ、サンダル(泥だらけ)、サンダル(壊れてる)、靴、靴、靴…。 所狭しまでとはいかないが脱ぎ散らかした靴だらけだ。正直汚い。 「これ全部こいつのです」 えっ。 「こいつに脱ぎ散らかし過ぎだとやんわり伝えただけですよ」 うーん。 ジャッジ。 「お前が悪い」 「あんでだよ!!!」 どう考えてもだよ。

ともだちにシェアしよう!