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(5)隣人トラブルはまず大家まで
何が起こったか。
まずキレた赤髪の左右田が角眼鏡こと右近を殴ろうとした。
そのまま眼鏡が割れるかとおもったらどっこい、殴りかかった腕を絡み取ってひねり、ひねり上げたのか?おそらく捻り上げて左右田を無力化したんだと思う。曖昧なのは仕方ない、本当に素早かった。
「お前の方が強いんかい」
「ん?あなた誰です」
「ギブギブギブぐぁああ」
うーん見事な片羽絞め。
じゃなくて。
1人ツッコミをしているその間に茂竿が後ろから補足をしてくれた。
「右近、この人が新しい大家さん」
「ああ。え?この方が?」
「………」
「そうです、大矢っていいます」
「驚きました。もっと年配の方が来られると」
「………」
「ねえ右近。左右田さん泡ふいてない?」
「おや」
左右田は真っ青な顔で泡をカニのように出していた。
落ちた左右田に活を入れる。
ほっとくと危ないしな。素人はやっちゃダメだぞ。
「っヒュ、ンゲホ、ゲホッゴホ!!て、んめぇ右近クソ野郎!!」
「本心ではないですがすみませんでした」
「アァ??!」
うーん、大丈夫そうだ。
また口論が始まりそうだったので俺から2人に話題をふった。
「なんであんた達ここで口論してたんだ?何かトラブルなら俺に言ってくれ」
隣人間のトラブル解決を手助けするのも大家の仕事だ。爺さんのメモにあった。直接出向いたりすると話がよりこじれることがあるので大家、あるいは管理会社を通じて話をつけよう。
この2人は手遅れだが、ダメージ軽減くらいはしてあげられるだろう。
「トラブルも何も、そんなたいした話ではないですよ」
「いいからいいから、な?」
「……。…、…靴です」
靴。
そう言われてると自然に足元に注意がいく。
右近は流石インテリ(にみえる)だけあって清潔感のある靴をはいている。
左右田は…かかとを踏んでる。あとヨレヨレ。
「そっちでななく、周りの方です」
周り。
周り、というと…。
そこまで広くはない玄関土足エリアを改めて見てみた。
サンダル、スポーツシューズ、サンダル(泥だらけ)、サンダル(壊れてる)、靴、靴、靴…。
所狭しまでとはいかないが脱ぎ散らかした靴だらけだ。正直汚い。
「これ全部こいつのです」
えっ。
「こいつに脱ぎ散らかし過ぎだとやんわり伝えただけですよ」
うーん。
ジャッジ。
「お前が悪い」
「あんでだよ!!!」
どう考えてもだよ。
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