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(9)熱した油に水を注ぐ

茂竿の書類をケースにそっと戻した。 次は、と。 横に細長い目の上に角眼鏡、101角部屋の右近だな。あのインテリっぽいやつ。 昔の写真だからか今より髪が短い、というかだいぶん短い。 さっき会った時はよく手入れされている、図書館の隅で本を読んでそうな髪型だった。だが写真の右近の髪はわりとかりあがっている。 そういえば、玄関で左右田を抑えて圧倒してたが………、ああやっぱり。 中高で柔道部だったんだな。おお、戦績もかなりいい。いいけど。 この紙面の情報と現物がイコールで繋がらないな。見た感じだけだと喘息持ち読書青年にしか見えなかった。 年は20で、茂竿と同い年か。たしかに親しそうだった。 親しそうといえば。 その真逆の左右田も20か?あんなギャイギャイ口論する仲だしなあ。 んー、左右田、左右田…赤髪…あったあった。髪染めてるやつは見つけやすいくていい。 102の不良騒音機、左右田。近代舞台芸術学科のこいつも学生か。聞いたことないな。それで年、年は…24歳。 にじゅうよん。ほお。え。えっ? 年下に殴りかかろうとすんなよ24歳。 いやいやいや、1つ2つならまだしも4歳差て。4年早く生まれて逆ギレで暴力振るおうとするな!そしてさらっと負けるな! ちょっと、おい、そう思うとなんか面白く思えてきた。要注意人物だけど。 あ、こいつ何回か補導されてるな。 どこまで調べてんだ爺さん…気になってたから良いけど。 さっき会った時は右顎から数センチほどの傷跡があったな。 でもこの書類の写真には無い。 うーん、少しこいつには注意して接したほうがいいかもしれない。 他にもあんまり褒められた経歴は無い。それに比べて右近はいろんな賞を獲得してる。 これを見てもあの2人が仲良くできそうな要素が見当たらない。 なんで隣に住んでるの? 気になって読み出したけどなんか先の不安が増えただけだ。 今日はもう読むのやめておこう。 書類を全部まとめケースに戻した。 さて。 見ないように見ないようにしていた背面を振り返る。床には放射状かつ床いっぱいに散乱した書類、書類、書類。 現実逃避はここまでか…。 部屋片付けるか!!

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