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[2.]ぱりぴのはりい
ベロ酔いで帰ってきて、鍵をどっかに無くし、部屋を間違えてピッキングで入ってきた常識がきわめて薄い男は
遠慮なしに俺のベッドで寝ている。
いびきかいたり寝相が悪かったりすれば廊下に転がしてやりたい所だが、
ムカつくことに大人しく寝ている。
大人しくどころか生きてるか不安になるくらい動かない。
体を丸めてベッドの隅にいるので寝ようと思えば俺も寝れないことはないが、
女子のように「一緒に寝よ」は出来ない。そういう趣味はない。そもそも肌と肌を長時間合わせるのはちょっと。
まだ俺は寝るつもりがなかったので、
ほっといた。しばらくすれば起きるだろうし、起きなければ床に置く。
先ほどまで絵を描いていた位置に戻り、筆をとった。
臭い臭いといわれたが、確かに油絵の用品はキツいニオイののものが多い。
が、あそこまで連呼されるとあまり気分がいいものじゃないな。
そう思いつつも筆を動かし製作を進めて行った。
「それなんすか」
「ヴァッ」
時間を忘れて製作をしていると突然後ろから話しかけられ驚いた。
「お、お、おまえ起きたのか」
「小一時間前ぐらいに」
「うそやん」
集中してたとはいえ全然気づかなかったぞ。
「大家さんがなんで俺の部屋で絵かいてんのかわかんねっスけどーすごく上手いっすね」
「あ、ありがとう…あとここ俺の部屋な…」
「え?」
まだ眠そうな顔で部屋を見渡す針井。
「うわまじだ」
そりゃそうだ。
「あっ、頭いてぇ…」
二日酔いじゃね。
頭の痛みが遅れてきたやつを低いテーブルに座らせた。
水…いやスポーツドリンクくらい出してやるか。
別に褒められたから気をよくしたわけではない。断じて。
「別に他人の生活にとやかく言うつもりも説教するつもりもねーから酒癖にちいてはなんも言わんよ。だがピッキングはやめろ」
心臓に悪いからな。
「すんません癖で」
「なおせ」
下手したら犯罪だぞ。相手が俺でよかったな。
「俺よく鍵なくすし…鍵直す金ってけっこうかかるし開けてもらうのもやっぱ金なんで、磨いた腕っす」
「誇るな」
誇らしげに腕を叩く針井。
金属製のアクセサリーがジャラジャラ鳴る。ほんとに派手な格好のやつ…。
喋り方もチャラかっ…うん、あれ?
「喋り方違くないか」
「え」
「もっとウェイな感じだっ「すんませんスポドリごちそうさまっした」
俺が言い終わる前にバタバタと針井は部屋を出て行った。
こうして、突然の乱入者は多少のモヤモヤを残して退場した。
次の日。
「ちょおっとぉ!!大矢ッち!!なにこの鍵!!なにこの請求書ォ!ワロえないんだケドー!!あんで俺持ちなワケ?説明急募ォ!」
「業者に頼んだの忘れてた。鍵無くしたのお前だし当然だろ?」
「だからってなんで全部屋分?!!」
「これは故意による発注」
「悪意ジャン!!」
「でもほら、オート式だから鍵いらずだぜ。寄るだけで開く」
「わー、ヤバミ、じゃなくてェ!」
「やっぱお前喋り方違…」
「明後日までにご用意シャス」
なんか知らんが、こいつの弱みを握ってしまったようだ。
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