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『2.』うるさそうだ
午前10時。
社会は動き出し、デスクに向かった人々は各自の作業を始める頃だ。
しかし俺はまだ共用ダイニングスペースから動けない。
目の前には先程温め直した2組の朝飯。
「おはようございやす…」
「出たな2大遅刻魔モサ茂竿」
「苗字増えてる…」
「1限遅刻確定じゃないのか?毎度ゆっくりしやがって」
「諦めが肝心…」
「おいコラ」
寝起きな分通常3割り増しのそのモサ髪を剃り落としてやろうか。
矢追荘2大遅刻魔、左右田&茂竿。
こいつらにせいで毎度片付けが遅くなる。もはやタイミングがわかってきたから温めなおすのも楽勝…あっ。
「しまった左右田の分も用意してた」
いないって聞いてたのに俺の馬鹿。
「仕方ない昼飯に回すか…」
「いやー多分大丈夫じゃないっすか」
「は?」
なにを言い出すこのモッサリ。
そして何ニヤニヤしているんだ気色の悪い。
そう聞こうとすると廊下からバタバタと走ってくる音が聞こえた。
誰だ?こんな時間に…左右田はいないし鱈師さんは寝てるし…混入はさっき来た。て、ことは。
「お、おはようございます…!」
「右近。お前どうした珍しい」
やはり足音は右近だった。
髪が寝癖だらけで眼鏡もずれている。
ずいぶんと慌てて入る様子、そりゃまあ遅刻確定な時間だからな。
しかしいっつも7時には起きてきて飯食って自分の皿洗いまでしていく優等生がどうしたんだ。
「どっか調子でも悪いのか?」
「い、いえ、目覚ましをかけ忘れていてそれで…」
なるほど目覚まし鳴らして起きるタイプだったのか。
とりあえずお茶出してやろう。急いで食べたら喉につまる。たしか冷蔵庫にまだ余っていたはず。
「かけ忘れじゃなくてどっか行ったの間違いでしょ〜」
「何言ってんだ、目覚ましに足生えましたーってか?そんなわけないだろ茂竿……茂竿?!」
目を離した隙にどうしたお前。
視線を戻すと茂竿は右近にヘッドロックをかけられていた。
「あだだだだだだ首とれるうう」
「………」
「右近顔、顔!怖いぞ」
なんでそんな鬼のような形相してるんだお前は。
右近のやつはどうもイライラしているようで、普段の落ち着きがみられない。左右田がいない間「散らかす人もいないし心穏やかです」ってな感じになるかと思ったがそうでもないらしい。ほんとわからないな、左右田と右近の関係性が。
「……茂竿、あんま変な事を言いますと張り出しますよ、ハンドルネームと表紙と顔写真のセットでね」
「勘弁して」
「お前らなんか言ったか?」
「「いいえなにも」」
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