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【4】

「本当にダミーでいいのか?」 「あ、は、はい。最近のは、わかりにくく作られてるし、です」 「安くすんでいいけど。まぁお前が言うなら信頼できるな」 今俺はイヤイヤ言う混入を引きずって大学にあるカフェに居る。 紹介されたサイトから何個かカメラをカートにいれた。後は部屋に戻って 郵送とかの手続きをしよう。 携帯をポケットにしまい、混入に向き直る。 カメラの事も重要だが、流石に それだけで大学まで来ない。 朝あった事で話があるからだ。 「…ところでさ、混入よお」 「………」 話を切り出そうとすると途端に口をへの字で閉ざした。 俺が何を話したいかわかっているん だろう。 だが話を止めることはできない。 どうにも引っかかる節が多かった。 それに俺は知らないが住人の中に『共通の秘密』があるようにも感じた。 「色々聞きたいけどよ、まずどうして 針井にあんなこと言ったんだ」 「……」 「確かにあいつは酔ったらピッキングしたりとんでもないやつだが、泥棒呼ばわりは言い過ぎだろ」 「………」 「あと、なんでお前が怒ったんだ? 被害にあったの…まぁ本人が気のせいっていってはいたけど…お前の部屋じゃないだろ?」 「……ぁ」 「てゆうかあんまり鱈師さんとお前ってどう言う関係…」 「ぁあの!!」 うつむきながら黙っていた混入は 急に机を叩き立ち上がった。 ガチャンと水の入ったコップが倒れる。 俺は驚いてしまって、ブルブルと手を震えさせ、眉間に深いシワを作っている混入を凝視する事しか出来ない。 「そ、その、大家さん、には…良くして、もらってます、し、食事、とか…色々…、でも、あの、ぁ、あの…」 「友達でもなんでも無いですよね」 予想外の言葉が、ズンと腹の底に落ちて来た。意味はわかったが意図を把握しきれずに俺の頭はフリーズした。 「部屋、かして、もらってるし、こ、ここ、こういうの、失礼、ってわかってますけど」 「そこまで、踏み込んで来てほしく、無いです」 失礼します、と俺を再起不能にさせた男は机に5千円札を置いて出て行った。 追いかける気も声をかける気も出ない。 年もそこそこ近くて、似たような大学に通っていて親近感が湧いた。 そこから飯作ったり共用のスペースを 掃除していたりすると、自然と住人たち全員との距離が縮まったように感じた。揉め事がおきれば間に入って収めてやるのも俺の仕事だと思っていた。 俺は勘違いしていたのか? 大家という立場を、はき違えていた? 住人達の嫌がる部分まで踏み荒らしてしまっていたのだろうか? ぶつけられた悪意のない本音が呼び水となって、「特に問題がない」と 今まで無い振りをし、押し込めていた不安が溢れて来る。 思考は悪い方へ 悪い方へと転がって行く。 立ち直れる気が、しない。

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