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【6】パーソナルスペース

混入にキツイ言葉を貰って意気消沈 していた俺だが、茂竿のいつも通りなもっさりムーブで重い気が抜けなんとか持ち直すことができた。 そして今は茂竿と一緒に繁華街近くの焼肉屋に来ている。 飯をつつきながら、茂竿が来るまでの混入とのやりとりなどを話した。 「混入先輩の『友達』認定って一般でいう唯一無二の親友ぐらいの 関係ですよ」 「ハードルたっか」 「それに俺ら大矢さんのことめっちゃ頼りにしてますし迷惑って思ったこと無いですよー、少なくとも俺と右近は」 でもなぁ。 はっきりいわれたしなぁ。 思い出したら腹痛くなってきた。 「先輩、ちょっと神経質だしそれに今気がたってるってのもあるんで」 「気が?なんで」 そこまで俺がいうと茂竿の口は急に止まった。箸を口に突っ込んだままモゴモゴとしている。 「あんま俺が言ったらダメかなーって、 こういうのは本人じゃないと…」 「やっぱあの2人なんかあんのか」 「ふ、ふたり?」 「混入と…鱈師さん」 「ぇえあっ」 なんつー声だしてんだ。 結局聞きたかった事は混入から聞けなかったから気になっている。 「いや、あは…ま、まぁ、詳しくは…あれですけど、あっ、でも!悪い関係とかじゃないっすよ!!ははは!! ンっ!ゲホっゲホっ!!」 「あーあーあーんな急いで飲むから」 誤魔化したかったために急いで飲んだお冷が変なとこに入ったらしくひどくむせていた。落ち着け。 背中を机越しにさすってやり、落ち着くのを待った。 「多分、鱈師さんまたストーカーで悩んでると思うんですよ」 咳が止まり、落ち着いてお冷を飲み直した茂竿はそう言った。 「やっぱりか…うん?また?」 「はい。鱈師さん、何回もストーカー被害受けたことがあって」 「……それは、言っていいのか?」 「下宿のセキュリティ云々みたいなあれなんで…」 「ああ」 正直こいつの情報通なところは助かる。 なんで詳しいかはわからないが。 「たまに見たこと無い人が下宿に居ても他の人の友達かな?ってスルーしてたら実はその人がストーカーっていうことが何回もあって」 「怖っっ!!爺さんなんも対策しなかったのか!」 「CDぶら下げてました」 「カラスじゃねーんだから!」 防げるか!!!! 「ストーカーのことはわかった。カメラも買ったしこんど知り合いの警察にも相談してみる。してみるが…」 きょとんと顔に米粒をつけている茂竿に、朝から1番気になっていた質問を ぶつけた。 米粒はとってやった。 「なんで針井が関係あるんだ?」 あまり個人の領域に踏み込んではいけないとは学んだ。だが、どうしても気になった。ダメな事だとわかって居るが、どうにも放っておけない。 「ぇえあ」 知ってるな、こいつ。 知ってるけど言いたく無いって面だ、 覚えてるぞ。 「あいつ個人のことは言わなくてもいいけど、お前がどう思うかだけ、それだけ教えてくれ」 「…」 「言いたく無いならいい。ただ、おちゃらけたやつだが人の部屋勝手に入って荒らすような奴には思えないからさ」 「そ、そうですよねぇ。俺もそう思います」 「だよなあ」 そう思ってるのが俺だけじゃ無いと 気づけただけで今は十分だ。 これ以上は進まない。

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