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【2】彼は必死だった

でかい奴はいい。 まず何より見つけやすい。 道を迂回し、混入を見つけた俺らはゴミ箱の影に隠れて様子をうかがう。 やばい、ワクワクしてきた。 混入はというとどこかの店の裏口前でタバコをふかしていた。 あいつタバコ吸うのか…。 ちなみにうちの下宿はタバコは禁止だ、火災報知器が鳴る。 「先輩タバコ吸うんだ…ヤバ…」 「情報通でも知らなかったか」 「めっちゃエモいっすね」 「エモ、え?」 「こっちの話でした」 「たまにお前が怖い」 しかし混入は誰か待ってるのか? もしかして彼女がキャバ嬢だったり、 まさか…いやまさかな。 コソコソと話している間に混入の目の前の裏口の戸が開いた。 「鱈師さん?」 出てきたのはドレスをまとったキラッキラッなキャバ嬢ではなく、黒いスーツと蝶ネクタイをしている鱈師さん だった。 「ラインきてびっくりしたよ。迎えに来てくれるなんて」 「…。」 ニコニコの鱈師さんと対照的に 混入の方はムスっとした顔つきのまま タバコをくわえている。 「煙草?やめたんじゃなかったの?」 「…返してください」 「ダメ」 くわえていたタバコをつまんで奪い、 そのまま自分の口に持って言った。 成る程、あの2人かなり仲が良いのか。 年は少し離れてるし大学の先輩後輩に関係が続いてる感じか? で、なぜか隣の茂竿が悶絶している。 どうしたお前。 「公式が殺しにきた…」 「何言ってんのお前?」 怖いからほっとこう。 外してた視線を2人に戻した。 目を離した間に距離が縮まってはいたが会話は続いている。 「俺、ただのボーイだよ?ホストじゃないんだから。心配いらないのに」 「嘘つかないでくださいよ、いるんでしょ、ストーカー」 「いないいない」 「鱈師さん」 「ほんとだよ」 「俺、知ってるんですよ!」 混入のやつ、いつも俺が話しかけたらアッアッ言ってんのにやけに 饒舌だな。 「仮に居ても、矢追荘の住人じゃないよ。朝の事、俺怒ってるんだからね? よりにもよって…」 「それは、軽率でした。ついカッと なって」 「俺じゃなくて針井君にちゃんともう一回謝っておいで。約束できる?」 「…。」 「こーら」 できればそこについてもっと掘り下げてくれないかな。いやだめだ会話がひと段落ついた。くそう気になる。 「じゃあ、せっかくナイト様がきてくれたんだ。エスコートをお願い しようかな?」 「……はい」 あ、やばいこっちきた。 茂竿悶えてないで下がれ、見つかる。 口元を押さえている茂竿を転がして 奥の方に移動した。 その間に2人は店の裏から出ていった。 でも来て良かった。1つ謎が解けた。 混入が鱈師の事を心配するのはきっと大学時代にすごく世話になった先輩で あんな感じで緩いから心配しているんだな。

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