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(2)右往左往@右近
「えっまだ左右田先輩と一線超えてないの?!」
「そもそも告白すらしてませんよ」
「うそだぁ!!!」
「なぜあなたが頭を抱えるんです!」
割と強めに殴ったにも関わらず早い復活を遂げた茂竿は頭を抱えて机に
突っ伏している。やけに夜中何やってると聞いてくるなとは思って
いたが、この男の中では私と隣に住む四歳離れた男とすでに交際していると
勘違いしていたらしい。
確かに私はあの男が好きだ。そのことで茂竿に幾度もなく話をしたり
相談に乗ってもらっていたが一度も付き合うことになったと報告して
いない。
やけに下宿でニヤニヤしたなんとも生暖かい目を幾度もなく向けられると
思っていたが原因がやっと判明した。
こいつに妄想癖があることをすっかり忘れていた。
「あなたと居ると感覚が麻痺するんですが、いいですか…
男同士の恋愛など少数派、ええ、非一般的なんですよ」
「そんなことないって、ほら最近そういう認知広まってるし」
「認知が広まっただけで性癖までは変わってませんよ…」
「いやほら、あのさぁ、そう!SNSとかでさぁ、例えばだよ?
おいしそうなオリジナルレシピあるじゃん、みかけたらさぁ作って
みたくなるじゃん?ねぇ!」
「それで」
「え、あーあ…ほら、気になるし、ちょっと、そのお試ししてみようかなーって
なったりとか…あはは…忘れて」
「そうします」
とんでもない暴論が飛び出しかけたが、この男なりに気を使ってくれたのだろう。
それ以上は掘り下げないでおこう。
同性同士の恋愛はあるし身近なものだと認知は近年広まってきてはいても
実際自分はどうなのか、と聞いてしまえば自分たちのようなものは少数派。
高校生ならまだホルモンがどうこう環境がどうこうといくらでも
「一時の迷い」の可能性があるが、私は成人した男だ。
これは迷いなのではなく間違いなく同性の男に恋しているのだ。
そして相手も同じ感情を持っている可能性などないに等しい。
私はこの気持ちをあの男に伝える気は毛頭ない。
それに…
「顔を合わせる度暴言を吐くような男を友人としても好かないでしょう普通は」
「いやそれは…右近先生が本人見たら緊張して毎回テンパってるからであって
脊髄反射で受け答えしてるから歯に衣きせぬなんちゃらで」
「うるさい」
「ああああ照れ隠しがすげぇ痛い」
仕方がないだろう。何をいえばいいかなどいくら考えていても本人が目の前に立つと
真っ白に忘れてしまうのだから!
それに行ってることは本当だ。好いている部分とは別にあの男の私生活の
だらしなさは文句がでる。靴は踏むわ人の洗剤は勝手に使うわ洗濯物は洗ったら
そのまま忘れるわ人の部屋の冷蔵庫勝手に開けて飲みかけのお茶を飲むわ!
「まってそこ詳しく」
「どこです」
「お茶がどうこうのとこ」
「そうですよ、聞きなさい!あの男、冷蔵庫をかってにあけて家主に断りなく
平気でお茶をのむんです!それもすでに開いてるペットボトルを直のみですよ!」
「それ各部屋にあるミニ冷蔵庫?」
「そう言ってるでしょう!」
「てことは部屋に左右田先輩きてるの」
「そうです!」
「なにしに来てるの?」
「勉強の部分でわからないところを教えてもらってるんです」
「俺、先輩が朝に右近の部屋から出てくるとこ結構目撃してんだけど」
「それはバイト終わりから夜中までずっと見てもらっているので、
最初は自室に戻っていましたが最近だと寝袋もちこんでるので」
「バイト終わりに????泊りで??え、最近って???」
「何ですか、変な部分などなかったでしょう?」
「変なとこしかなかったけど?!」
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