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(3)右往左往

大学生というのはドブドブと金が無くなっていく職業だ。 特に芸術系ともなると画材やらなんやらでもっと金が減っていく。 それを哀れと思ってか高い学費の気持ち程度のキャッシュバックか、大学内の購買や画材屋は通常価格より安い。 というわけで俺は絵の具などを大学内にある画材屋を利用している。 あまり褒められたことでは無いのでみんなには内緒にして欲しい。 まぁたまに明らかに関係者ではない 老夫婦とかランチしにきてたりとかあるしな。 ということで俺、大矢は無くなった白と赤絵の具を買いに住人達が通っている大学に来ている。 というかもう買った。 ちょっと大学内のカフェで一服していきたい気分だが、あまり長居せずに帰ろう。混入と出会ったら気まずい。 あの一件以来まともに話してないというか向こうから避けられてる。 俺としてもどう対応したもんかと思っているが、見事にトラウマになっているからな…。いや、これくらいの距離感がいいんだきっとそうだ。 そんな事を考えながら人通りを少ない道を選んで帰路につこうと歩みを進めていた。昼頃だからうかれた大学生が多くて騒がしい。俺はこういう騒がしさ大好きだが、いかんせん部外者なもんで少々バツが悪い。 さっさと帰って続き書こう。 もう何点か仕上げれたら個展とかやってみたいな、うーんでも近くにいい感じの画廊あったかな?そもそも借りれるほどの貯蓄あったかな?銀行よって 残金確認してこようかな…。 そういや冷蔵庫空っぽだ明日の朝食何作ろう。最近ちょっとマンネリになってきたんだよな。 お? あの見覚えのあるもっさりファッションは茂竿だな。隣に誰か…おお右近か。あの2人同い年ってのもあってなかなか仲いいよな。昼飯も一緒に食べてるのか、いいねえ。 ちょっと声かけてから帰るか。 ついでに朝何食いたいか聞いていこう。 「おい茂竿、右近…」 「だから絶対好きだって!!」 「そんなわけないでしょう!」 なんだなんだ恋バナか?それにしてはやけにトゲトゲしい恋バナだなもっとこう青春くさく話せばいいのに。いや青春くさい会話ってなんだ。 すごい気になるから聞いてくけど。 しかしはたから見れば激しい討論会のような光景だ。なんかこう女子っぽくおやつツッツキながらのんびりまったりやれよお前ら。 白熱しているコイバナのせいで俺が真後ろに立っていることに全く気づいていない。 何故気付かない、文字通り真後ろでしゃがんでるんだぞ俺。 「大丈夫だって!!絶対脈アリだって告白しても大丈夫だって」 「何が脈アリですか適当言わないでくださいお前の動脈引き千切るぞ」 察するに右近が誰かに片思いをしているがそこで停滞しているので 茂竿が発破かけようとしているといったところか。 右近が好きな子ってどんな子なのか大家さん気になっちゃうなー やっぱり文系女子か?染めたりとか変に髪をいじったりしてないこで 大人しくて物静かでデート場所は図書館の隅の席みたいなそんな子が すきだと俺は見た。 うーん、混ざりたいこのコイバナ。 すでに終わった青春の味をもう一度味わいたい。 というかもうこの距離だしいいよないいよねよっしゃきめた混ざる。 「なぁお前ら…」 「いっぺん左右田先輩にあたってみなうわ大矢さん?!!!!!」 「驚きすぎだろもさ…えっ左右田?」 「…」 「…」 「…」 「えっ…右近君、え、そう…左右田?まじか」 「…」 「…」 「茂竿…私に…手ごろなロープを」 「お供します」 「まてまてまてまてまてまてまて」

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