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(4)右往左往
右近と左右田は仲が悪い。
毎朝毎朝廊下で口論、三回に一回の確率で暴力沙汰。
そのたび俺が間に入って収めている。
神経質で細かい右近と時間やら生活やらなにかとルーズな左右田が
そもそも相性がいいはずがない。
それなのになぜ隣の部屋のままでいるのかが謎だった。
引っ越しの手間とかあるかもしれないがトラブルが避けられるなら俺は
喜んで手伝うし、そもそもそういう誘いは何度か右近にも左右田にも
している。
しかし二人は頑なに「このままでいい」と言うのが不思議で不思議で。
「夜に音楽を聴くときはヘッドフォンをしろ」「壁を叩くな」
「真夜中に掃除機をかける馬鹿がどこにいる」「バカ騒ぎをするな」
そう口論を始めるくらいなら部屋を移すかいっそ矢追荘をでるなど
(実際にされると非常に困る収入的に)すればいいのに。どうして自分から
ストレスの種を自給自足しているんだ?
――――そう、思っていたが。
「そっかお前左右田のこと好きだったのか」
「zvじjdv;おz~~~~~!!!!」
「右近が見たこともない顔でよじれブリッジしてる」
「体やわらけーなオイ」
寿命縮めそうな体制でブリッジしてる右近の顔は俺の位置からじゃ
見えないが相当…そう、そうと…いやどう表現すればいいかわからんが
なにかしらのナニに俺がとどめを刺したことだけはわかる。
すまん右近。俺オブラートに包むの苦手で…。いろんなとこから
もれでちゃう不器用なばっかりに…。
「いやでもスッキリした~そうならそうといってくれりゃ良かったのによ」
知ってたら俺もあんなに部屋かえる?って聞かなかったのに。
その右近はまだブリッジをして…いやなんかぼそぼそ喋ってるな。
なんて?茂竿?
「なんで普通にうけいれてるんですか?と」
「ナニを?」
「いや、その、ほらー…言っていい?…いい?だから右近が左右田先輩好きって
事を、いっっだ⁉言っていいっていったじゃん!!」
ブリッジ状態のまま器用に茂竿の脇腹を蹴るな、面白いから。
もう完全に神経質な右近先生のイメージ崩れたぞ、ブリッジ先生。
「いいじゃん、俺そういう青春くせーの大好き」
「…………」
「右近なんて?」
「…男同士ですよって」
「いいじゃん」
「いいわけないでしょう!!」
「おぐぅぅう」
「大矢さーーん?!!」
なんでその体制から俺のほうに飛び蹴りきめられるんだよお前、
あちょっとまってほんとに痛い痛い内臓つぶれた絶対。
そういや初めてこいつに本気の蹴りいれられたかもしれない。
「左右田すげぇな…毎朝これうけて…んのか………」
首の後ろトンってやられたり腹殴られただけで人が気絶するわけないだろ、
って思ってるやつらに伝えたい。
割と逝く。
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