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(6)左往右往

「つかソーダっち雑魚くね?」 プリン頭がSNSをあさるのに飽きて突然話題を放り投げてよこした。 「あ?」 左右田は眉根を寄せただでさえ吊り上がっている目じりをさらに上げる。 「そいつ、だれだっけ?ウンコクンだっけ?くそ年下なのにお前されたい放題じゃん」 「右近な。てめぇの頭のほうが雑魚だわ」 「でもさー」 次に変ななまりのあるピアス男も会話に混ざってきた。 「顔殴られてなんもなしってぬるいわ」 ピアス男がいうのはもっともなことで、実際に顔に痛々しい青あざができている。 すれ違うたび二度見されてもおかしくはない。いや実際されている。 左右田は指摘された箇所をなんのけもなしに触った。指で押すとまだ痛むが我慢できないほどではない。鼻血もとうの昔に止まっている 「下宿の大家が止めに入ったから、手ぇ出せなかっただけだっつの」 左右田はそう言いはしたが、自分より年下の右近に腕力や技術で敵わないことは身をもって実感している。何より右近は理不尽に文句を言ってきたりはしない。十割がた左右田に非があるときにだけ文句をつける。暴力を振るうときは大体は先に左右田のほうがけしかけているのもあり、事後の怪我に関してはあまり右近を責められない。 その事はこの場にいりびたっている友人達にはなんとなく「ダサい」から言っていない。 きっと興味もそんなに無いだろう。 「そっかー」 「やさしー」 適当な返事でまた会話が途切れた。 しばらく沈黙が続く。 「あ、次俺必修だわ」 「俺も」 プリン頭とピアスの2人がおもむろに立ち上がりスカスカの鞄を背負って席を立った。特に挨拶もなくそのまま出て行くがあと1時間弱もすればまたここに戻ってくる。 ちなみに左右田はレポートを消化しに来ただけなので授業がない。 席にはいまだに寝続けている青髪と左右田だけが残っている。 先程席を立った二人はレポートをしようとすれば「真面目か!」「適当でいいんだよ!」と茶化してくる。正直にいうと結構邪魔なので居ない今のうちに進めたい。 一度気分を切り替えるために一度廊下にあるドリンクバーで珈琲を取りに行く。 ついでに飲み散らかされたエトセトラを所定の位置へ返却してから席に戻った。 「不思議なんだけど聞いていい?」 「⁈っとと、…起きてたのかよ」 珈琲を手に席に続く扉を開けると青髪が普通に起き上がって座っていた。ずっと起きてましたけど?といった顔で。 驚きコップを落としかけるがなんとかバランスを立て直し大事には至らない。 「モチ」 青髪でタレ目の男はニコリとも笑わずにピースをしている。 この男は葵といい先程の二人と違って文字通りの意味で左右田との仲が良い。 「話聞いてたけど痣押していい?」 「いでぇっ押してるじゃねーか!」 「はははひでー顔こっち切り傷?」 「めくんじゃねえボケ」 粗雑な口調だが左右田の表情は明るかった。

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