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第12話

『だからなんだか親だって思えなくて、ああはなりたくないなぁってずっと思ってました』 『ジザベル様は笑った方が素敵です』 『........イタ、.....イ.......』 記憶の中を歩くような夢を見て、ジザベルは目を開けた。 寧ろずっと開けていたのかもしれない。 現実と夢の間の世界が肉体の上に重く伸し掛かり指先さえ動かせなかった。 「........生きてるから痛いんだよ」 妙にはっきりした声が暗い天井に吸い込まれた。 イタイ、イタイ、イタイ? ミナの泣いているような、掠れた声が耳元で聞こえた。 途端に頭が割れそうに痛くなり、 ジザベルは頭を抑える。 「ッあ....うあああああああああッ!!!!!」 吐き気と、目眩と、身体の痛み。 呼吸1つする度に何処かが壊れて弾け飛んでいくようだった。 ジザベルはベッドで暴れそのまま床に転がり落ちた。 「なんでだよ、なんでだよ!!!!!」 髪の毛を掻き毟り、声帯が潰れそうな程の大声で叫んだ。 それでもその耳には遥か遠くで啜り泣く少女の声が張り付いて離れない。 「やめろやめろやめろ!!! やめろやめろ、やめ、ろ.....!」 声を出し続けても泣き声は消えない。 悲しい、冷たい。痛い。泣き声だ。 ジザベルはそれが想像なのか記憶なのか、今目の前で起こっていることなのかが分からず 床を転げまわり涙を流して床を殴った。 「う...、うう.....っ...僕は...」 何度も何度も床を殴った。 床に跳ね返された手からは痛みは全く感じず、歯痒さに唇を噛み締めやがてそのまま頽れる。 「僕は、最低だ.....」 莫大な喪失感が足元を昇り、やがて身体中を蝕んでいった。 酷い寒さに凍ってしまいそうだった。 体を縮めて耳を塞ぐ。 心臓の音が聞こえた。 「僕を殺して」

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